2011 Fiscal Year Annual Research Report
昆虫類のメス交尾器に“隠された"多様性?観察技術の確立と応用?
Project/Area Number |
22770058
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
上村 佳孝 慶應義塾大学, 商学部, 専任講師 (50366952)
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Keywords | 昆虫 / 進化 / 交尾器形態 / 性選択 / 顕微鏡観察技術 |
Research Abstract |
平成23年度の主な成果として、昨年開発した透明化による観察手法を、直翅系・半翅系・鱗翅系・鞘翅系などの他の昆虫の各グループに応用する研究に着手した。多くの昆虫群で、ショウジョウバエ類と同様に、適当な時間内に交尾器のカップリングを透視観察できることが判明しつつある。しかし、鞘翅系(=甲虫類)においては、前翅を含む外骨格クチクラの脱色が進まず観察が困難な種類があることも判明してきた。今後、新たな手法を工夫する必要がある。 平成22年度から続けているショウジョウバエ科のキイロショウジョウバエ種亜群(the D. melanogaster/species subgroup)を用いた研究においては、昨年度の成果であるthe D. melanogaster/speciescomplex 4種に関する研究成果を誌上にて発表した。また今年度新たに近縁な2種間(D.yakuba-D. santomea)において、交尾器の形の違いによって、精子の受け渡しがうまくいかず、生殖的な隔離が生じていることを発見し、学会発表をおこなった。これは昆虫類では2例目の発見となる。本研究については、誌上の発表も進められている(印刷中)。またこの研究には、前年度に開発した交尾中のペアを固定し非破壊的に透過観察する技術が応用されている。 また、一般に左右対称な外部形態を示す昆虫において、交尾器形態は左右非対称な形を示すものも多い。このような体の左右非対称がどのような遺伝様式によって進化するのか、議論が続いている。この問題に関する新しい理論モデルに研究も、関連する課題として実施し、その成果を誌上にて発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「昆虫メス交尾器の微細形態について一般的な観察手法の確立」が調査の主眼であるが、今年度は予定通り、多様な昆虫群への応用に着手することができた。しかし、甲虫類のように、ショウジョウバエでの手法がそのままに適用できないグループもあり、完全に確立したといえる状態には至っていない。 光学顕微鏡や走査型電子顕微鏡を使用した観察は順調に進んでおり、誌上での成果発表に至っている部分も多い。 一方で、東日本大震災やその後の停電の影響を受け、共焦点レーザー顕微鏡を用いた研究については遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
・交尾器形態の軟膜質部の微細形態観察については、現在うまくいっていない鞘翅類(=甲虫類)の外骨格の脱色方法の開発を含め、より一般性を高めていく必要がある。具体的には、過酸化水素の利用を検討しているが、非破壊的な瞬間冷凍固定との両立に工夫が必要である。 ・校務との両立の中で研究の効率を高めるため、季節に左右されることの少ない亜熱帯~熱帯域のサンプルを研究対象に含めていくことを検討中である。
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