2012 Fiscal Year Annual Research Report
昆虫類のメス交尾器に“隠された”多様性~観察技術の確立と応用~
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22770058
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
上村 佳孝 慶應義塾大学, 商学部, 講師 (50366952)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 昆虫 / 進化 / 交尾器形態 / 性選択 / 顕微鏡観察技術 |
Research Abstract |
平成24年度の主な成果として、昨年開発したBABB処理による透明化の手法を、熱帯産の昆虫類に適用した。本手法と他の手法の併用により、熱帯産の革翅類(Allostethus, Echinosoma, Maravaなどの各属)・半翅類(Cimex属)などの交尾器のカップリングや繁殖生態について、新たな知見を得ることができた。Allostethus属は通常Labiduridae(オオハサミムシ科)の一員として分類されているが、翅形態に関する詳細な研究がおこなわれた結果、より祖先的な特徴を多く残していることが示され、その分類学的な位置づけは定まっていなかった。今回、本属に属するA. indicumの交尾器形態と交尾時における交尾器のカップリングを詳細に調査した結果、オスの左右交尾器の使用に関しては、オオハサミムシLabidura ripariaと同様な偏りが観察されるものの、雌の交尾器形態は多くの祖先的な特徴を残しており、翅形態に基づく先行研究と同様に、より早い段階で分岐したグループの一員と考えるのが妥当であると考えられた。 鞘翅系(=甲虫類)においては、BABBによる手法では、前翅を含む外骨格クチクラの脱色が進まず観察が困難な種類があることも判明してきた。解剖による外骨格の物理的な除去、または、過酸化水素水の併用が解決策になると考えられたが、後者は軟組織の一部を破壊してしまう可能性があり、現状では、外骨格の物理的除去が最良の方法であると考えている。 昨年までに得られた研究成果については、the Drosophila melanogaster species subgroupに属するショウジョウバエ類に関する一連の発見を3編の論文として、誌上にて発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成24年度までに必要なデータの収集を概ね終了することが出来たため、平成25年度は成果の誌上発表がメインとなる予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
論文用の図の作成や、補足データの収集のため、追加のサンプル収集・観察もおこなうが、主にはこれまでの成果の誌上発表のための論文執筆に注力する予定である。
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