2010 Fiscal Year Annual Research Report
昆虫の点光源コンパスの不安定性とその補償としての並行処理
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22770067
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Research Institution | Hamamatsu University School of Medicine |
Principal Investigator |
弘中 満太郎 浜松医科大学, 医学部, 助教 (70456565)
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Keywords | ナビゲーション / 定位 / 経路積算 / 太陽コンパス / 複眼 / ツチカメムシ類 / 亜社会性 / 視覚 |
Research Abstract |
ナビゲーションを行う動物の多くは,太陽コンパスに代表される,点光源を基準として方向を決定するコンパスを利用することができる.本研究課題では,1.動物の点光源コンパスの機能的制約と,2.その制約への補償,について明らかにすることで,動物の多様なナビゲーションシステムの進化背景を理解することを目的としている.フタボシツチカメムシ及びベニツチカメムシは,キャノピーのギャップを基準とするキャノピーコンパスを用いて,'巣と餌場とを往復する.本年度は,ベニツチカメムシを材料に,1.のキャノピーコンパスの機能的制約について研究を進めた.太陽のように無限遠にある視覚目標は,動物の移動に伴って見かけ上移動するため,コンパスの基準点としてより安定していると考えられる.カメムシの利用するギャップまでの距離が,定位の精度に影響を与えるかどうかを実験的に検証した.野外でカメムシの繁殖場所の地表から,コンパスの基準として利用可能と想定されるギャップまでの距離を測定したところ,2mから17mまでの大きな差がみられた.この観察結果をもとに,0.5m(近位)と2.5冊(遠位)という距離の異なる2つのギャップを開口させた実験アリーナを野外に設置し,そこでカメムシを定位させたところ,以下の結果を得た.(1)それぞれのギャップを単独で提示した場合,カメムシはどちらのギャップでも目的地へ定位できた.(2)しかし,その定位精度は,遠位のギャップに比べて近位のギャップで低くなった.(3)両方を同時に提示した場合には,高い定位精度がみられた.(4)両方を提示して途中で一方を閉鎖して定位させた場合も,目的地へ定位できた.これらの結果は,本種のキャノピーコンパスでは,ギャップまで距離が定位精度に影響することを示している.また,複数のギャップが存在する場合,カメムシがそれぞれを独立したコンパスの基準点として利用する可能性を強く示唆している.
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Research Products
(2 results)