2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22770068
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
田中 暢明 京都大学, 生命科学系キャリアパス形成ユニット, 客員研究員 (20517924)
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Keywords | 感覚情報処理 |
Research Abstract |
昆虫が求愛を始め、交尾に至るためには、相手から発せられるフェロモンの情報が脳内で処理される必要がある。ショウジョウバエには、約60タイプの嗅細胞があり、そのうち2タイプが雄の匂いに特異的に、また別の2タイプが雌雄両方の匂いに応答することが知られている。しかしながら、雄や雌の様々なフェロモン物質の刺激入力が脳内でどのように処理されて、種や性の識別を引き起こしているのかは、いまだわかっていない。また、フェロモン刺激に対する神経応答が、交尾経験などに応じて変化するかどうかは調べられていない。 本研究では、まず雄フェロモンであるcis-vaccenyl acetate (cVA)に応答することが知られている嗅細胞、そして、その入力を受ける様々な投射神経に、それぞれ特異的に、カルシウム蛍光指示タンパク質であるGCaMP遺伝子を発現させ、そのフェロモン応答をリアル・タイム・イメージング法で可視化した。その結果、嗅細胞と投射神経のcVAに対する応答様式に差は検出できなかった。このことから、cVAによる刺激入力は、嗅覚系1次中枢内では、局所介在神経の処理をそれほど受けないことが示唆された。 その一方で、未交尾雌と既交尾雌とで、cVAに対する神経応答を比較してみたところ、既交尾雌ではcVAに対する応答が小さくなることが明らかになった。交尾後、雌は雄の求愛を一過的に受け入れなくなるが、既交尾雌の雄に対する関心の変化が、雄フェロモンに対する神経応答の減少によって引き起こされている可能性が示唆された.
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