2011 Fiscal Year Annual Research Report
日本の湖沼のもつ氷河期退避地としての重要性を枝角類の種系統と系統地理から検証する
Project/Area Number |
22770076
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
石田 聖二 東北大学, 国際高等研究教育機構, 助教 (80547331)
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Keywords | 淡水動物プランクトン / 系統地理学 / 分類学 / 生物多様性 / 氷河期サイクル / 枝角類 |
Research Abstract |
約10万年周期の氷河期サイクルを通して日本列島では比較的に温暖湿潤な状態が維持されており、温帯域の淡水生物の氷期の退避地として多様な遺伝系統を維持してきた可能性がある。本研究課題はこの仮説を検証するために日本の淡水湖沼に頻繁に出現する動物プランクトン(枝角類)のBosminopsis, Bosmina, Diaphanosoma, Ceriodaphniaの4属で種系統の多様性と種内の個体群構造を網羅的に解析する。22年度では次の3項目を実施する計画であった。(1)日本全国での枝角類の採集、(2)ミトコンドリア遺伝子のプライマーを用いた種系統の解析。(1)のために日本全国97カ所の湖沼で動物プランクトンの採集を行った。そのうち12カ所からBosminopsis、67カ所からBosmina、13カ所からCeriodaphnia、22カ所からDiaphanosomaを得られた。広範に分布する多数の湖沼から枝角類のサンプルが得られたことで、今後日本の枝角類の多様性を充分に評価できる試料として利用できる。(2)のためにミトコンドリア16SrRNA遺伝子領域を増幅して、採集で得られた4属の種系統を解析した。Bosminaからは4系統(Eubosmina tanakai, Bosmina longirostris, Bosmina freyi, Bosmina fatalis)、Bosminopsisから2系統、Diaphanosomaから7系統、Ceriodaphniaからは8系統がいることが分かった。Bosmina freyiは日本では記載されていない。Bosmina freyiとBosmina longirostrisの2種を混同して、Bosmina longirostrisと認識されてきたと考えられる。また、これまでのBosminopsis, Diaphanosoma, Ceriodaphniaでは日本で記載されている種数がそれぞれ1,2,6種であり、今回得られた種系統よりも少ない。これらの属で未記載種がいる可能性が示された。本研究により日本の枝角類の多様性がより明確になりつつある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的を遂行するためには、できるだけ多くの池や湖から枝角類の試料を採集することが必要である。22年度および23年度で、267箇所の湖沼からBosminopsis, Bosmina, Diaphanosoma, Ceriodaphniaの4属のサンプルを得られており計画通りに進んでいる。また同時にミトコンドリア遺伝子による系統解析も、おおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
22年度および23年度の試料採集により得られたBosminopsis, Bosmina, Diaphanosoma, Ceriodaphniaの4属のサンプルについて、ミトコンドリア遺伝子による系統解析を続けること。
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Research Products
(3 results)