2011 Fiscal Year Annual Research Report
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22770086
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
仲田 崇志 慶應義塾大学, 政策・メディア研究科, 特任助教 (10548994)
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Keywords | 進化 / 生理学 / 藻類学 / 微生物 / 分類学 / 緑藻類 / 倍数体化 |
Research Abstract |
互いに近縁種であるにもかかわらず,緑色で光合成を行うと考えられるChlamydomonas neoplanoconvexa IiSO801D6株(本種の種同定についてはPhycological Research誌に論文発表)と,無色で吸収栄養を行うと考えられるNrC1-902株について,光の有無や酢酸イオン(有機物)の有無が増殖に及ぼす影響を比較した。その結果,IiSO801D6株では酢酸イオンの有無によって増殖が影響されず,増殖には光合成が必要なことが分かった。一方でNrC1-902株は酢酸イオンによって著しく増殖が促進された。IiSO801D6株は有機物を含まない環境ではNrCl-902株よりも著しく早く増殖するが,有機物を含んだ環境(特に暗黒下)ではNrCl-902株の方が増殖が早く,環境に応じた棲み分けが実際に起こっている可能性が示唆された。 また,無色の藻類は一般的に有機物を吸収する従属栄養によって生活していると考えられているが,NrCl-902株が有機物を含まない環境で僅かながら増殖することが分かった。このことはNrCl-902株が僅かながら光合成を行っている可能性を示唆しており,本種が光合成能を失う途上にある中間的な生物である可能性をしており,大変興味深い。 次に,前年度に倍数化による進化が起こっていると予想されたChlamydomonas parallelistriata種群においては,増殖の測定方法を改善し,正確なゲノムサイズの測定を試みた結果,近縁種間でDNA含量に4倍程度の差が認められた。また分子系統学的な研究からもゲノムサイズの大きい株が他の株とは別種であることが裏付けられた(日本植物分類学会第11回大会発表)。このことから,ゲノムサイズの変化が微細藻類の種分化と関連している可能性が示唆される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
交付申請書に記した,25℃におけるChlamydomonas reinhardtiiとChlamydomonas globosaにおける増殖能の差が僅かであったため,より顕著な差が想定されるChlamydomonas neoplanoconvexaIiSO801D6株とNrCI-902株に対象を切り替えたことと,Chlamydomonas parallelistriata種群の細胞が細胞塊を作りやすく,正確な細胞数測定方法の確立に時間がかかったため。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度実施できなかったChlamydomonas parallelistriataの増殖比較とメタボローム解析を進め,ゲノムサイズの変化が増殖・生理様式にどのように影響しているのかを明らかにする。また,Chlamydomonas peoplanoconvexaIiSO801D6株とNrcl-902株の比較については各培養条件下でのメタボローム比較を行い,光合成能の喪失やその程度,従属栄養の影響が中心代謝系路の活性に及ぼす影響を明らかにする。
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Research Products
(4 results)