2011 Fiscal Year Annual Research Report
日本産イモリ属の多様性評価と個体群分類のための分子遺伝学的研究
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22770087
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
富永 篤 琉球大学, 教育学部, 講師 (60452968)
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Keywords | イモリ属 / 日本 / 東アジア / 種分化 / 系統解析 / 系統地理解析 / 集団遺伝解析 / 氷期 |
Research Abstract |
本年度は、遺伝解析のためのサンプリング、mtDNA、核DNA領域の配列解読と系統解析、系統地理解析を行った。 mtDNAの解析の結果、日本産2種(アカハライモリ、シリケンイモリ)には非常に大きな遺伝的な分化が見られ、2種の単系統性は支持されるものの、その分化程度は近縁の属間の遺伝的距離にも匹敵することが明らかとなった。アカハライモリは4つの主要クレイドに大別され、主要クレイド間の遺伝的分化も非常に大きいことが明らかになった。また、各クレイド内にも幾つかの地理的集団が見られることも明らかとなった。さらに高緯度に分布するクレイドほど面積あたりの遺伝的多様性が低く、本種の高緯度のクレイドは更新世の氷期によって分布域が縮小し、その後の間氷期に再び分布拡大が起こり、現在の地理的構造が形成されてきたことが示唆された。こうしたmtDNAの分化は、先行研究で明らかな外部形態、アロザイムの分化パターンと地理的境界が大まかに一致することが明らかになった。これらのことからアカハライモリには幾つかの種が含まれていることが示唆され、分類学的な再検討が必要であることがわかった。核DNAの遺伝子領域においても、関東以北のクレイドは単系統群となり、mtDNAの結果を支持した。核DNAの領域においてはその他のクレイドは明確な地理的分化が見られなかったが、これはincomplete lineage sortingによる祖先多型の保持に起因するものと考えられた。クレイド間の遺伝的交流の実態把握を進めるために、次世代シーケンサーを用いたマイクロサテライトマーカーの開発を行った。その結果、従来の方法では開発の難しかった本種においても幾つかのマイクロサテライトマーカーを開発することが出来た。現在、マルチプレックスPCRによる解析のため、各マーカーの組み合わせを検討している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初目的としていたmtDNA、核DNAの解析はほぼ完了し、現在論文投稿のための原稿を執筆している。マイクロサテライトについてもマーカーの開発を終え、解析を開始しているため。
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Strategy for Future Research Activity |
mtDNAの主要クレイド間の境界領域でのサンプリングとマイクロサテライトによる遺伝解析を進め、遺伝集団間の遺伝的交流の実態把握を進める。
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Research Products
(4 results)