2010 Fiscal Year Annual Research Report
伊豆諸島-小笠原諸島間における沿岸性海産魚類の生物地理学的研究
Project/Area Number |
22770089
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Research Institution | National Museum of Nature and Science, Tokyo |
Principal Investigator |
栗岩 薫 独立行政法人国立科学博物館, 標本資料センター, 特定非常勤研究員 (50470026)
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Keywords | 生物地理 / 小笠原 / 豆南諸島 / アカハタ / 浅海性魚類 |
Research Abstract |
世界的に見ても特筆するほどの多様性に冨む日本沿岸の魚類相、その成り立ちを明らかにするには、生息する魚類の時空間分布に対し統合的なアプローチをする生物地理学的研究が有効である。しかし、閉鎖的環境にあるため研究例の豊富な淡水魚に対し、物理的障害がなく開放的環境にある沿岸性海産魚については報告がほとんどない。本研究では、日本の魚類相を考える上で最も興味深い海域の一つである伊豆-小笠原諸島について、ハタ科アカパタおよびチョウチョウウオ科ユウゼンを用いだ分子系統学的および集団遺伝学的解析、さらに沿岸性魚類全般の採集とリスト化による魚類相の比較解析といったアプローチにより、同海域の自然史を明らかにしようと試みた。 22年度は、伊豆諸島と小笠原諸島の間に位置する4つの無人島群,豆南諸島における採集調査を行った。豆南諸島は、過去に鳥類や深海魚についての調査などは行われたことがあるものの、浅海性魚類については手つかずの状態であり、本研究による採集調査が史上初めてのものである。本調査では推定で約400kgを超える膨大な量の魚類を採集し、すべて国立科学博物館・魚類学術標本ナショナルコレクションに標本として登録した。同定の結果、採集し登録した標本ほ9目35科89種365個体であった。八丈島と小笠原諸島から報告されている魚類相リストから推定するに、豆南諸局に生息する魚類の種数はおよそ900種程度と思われ、本調査ではその1割を採集したことになる。 採集した魚類の標本処理が22年度内に終了し、現在は魚種リストの論文化と、ターゲット種としたアカハタおよびユウゼンの遺伝学的解析を進めているところである。
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