2010 Fiscal Year Annual Research Report
深海底熱水生態系を支える化学合成独立栄養細菌に感染するファージの多様性解析
Project/Area Number |
22770092
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Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
吉田 ゆかり 独立行政法人海洋研究開発機構, 海洋・極限環境生物圏領域, 技術研究副主任 (10553216)
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Keywords | 深海熱水噴出域 / バクテリオファージ / 化学合成細菌 / 分子系統解析 / 多様性 |
Research Abstract |
本研究では、深海底熱水噴出域に優占し、かつ重要な一次生産を担う化学合成独立栄養細菌に感染するファージの単離・性状解析を行い、化学合成独立栄養細菌対ファージの両者の生物学的相互関係を解明することを目的とする。本年度は、まず、深海底熱水噴出域から宿主菌となる化学合成独立栄養細菌の単離を行った。沖縄トラフ鳩間海丘に位置する深海底熱水活動域で採取した試料からEpsilonproteobacteriaに属する細菌36株、Gammaproteobacteriaに属する細菌4株、Aquificalesに属する細菌7株、計48株を単離した。マイトマイシンCを用いたファージ誘発試験により、これら単離菌株における溶原性ファージの有無を明らかにした。その結果、Epsilonproteobacteriaに属する細菌11株、Aquificalesに属する細菌2株、計13株の細菌でファージの存在が認められた。これらの単離菌株のうち、中温性で硫黄酸化・水素酸化を行うNitratiruptor sp.SB155-2株の溶原性ファージについて、電子顕微鏡による形態観察を行ったところ、多角形の頭部と非収縮性の長い尾部を有するシフォウイルス科に分類された。今後、本ファージのゲノム解析を進めるとともに、ファージ株間における性状比較を行う予定である。また、熱水噴出域周辺においてウイルス様粒子の分布調査を行った結果、ウイルスと宿主の相互関係が生息環境(水環境および微生物マットなどの付着環境)によって大きく異なる可能性を見出した。今後、このようなファージの生活様式の差異を考慮し、各環境に適したスクリーニング方法を用いてさらなるファージの単離を試み、ファージライブラリーの拡大化を図る。
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