Research Abstract |
本研究は,セレノプロテイン翻訳時に真核生物80Sリボソーム上で要求される蛋白質群(SBP2,EFSec,L30)と二種類のRNA(Sec-tRNASec,SECIS)間の相互作用を精密に解明することを目的とした.これまでの研究により,ヒト由来SBP2,L30,EFSec,SECIS-RNA,tRNASecの調製に成功し,生化学的実験を進めてきた.L30に関して結晶構造解析及びRNAとの結合実験をおなうことができ,論文発表した.また,機能的tRNASecの調製方法を確立することができたため,アミノ酸存在下においてEFSecやSBP2との相互作用研究を進めている.また,EFSecに関しては,野生型では結晶をつくることが難しく,結晶化効率を上げるために変異体(F577L:真核生物間で保存されていない残基を置換,rEFSec:二次構造予測からループと推測される領域を欠損,K495E:SERを用いタンパク質表面に存在すると考えられるエントロピーの高い残基を置換)を作製した。野生型ではITCを用いてGDPとの相互作用解析を行い,Kd=229nMでの相互作用が見られ,調製したタンパク質は正しい構造をとっていることが確認できた.また作製した変異体では,CDスペクトルの結果,α-ヘリックス,β-シートを表す波長での吸収スペクトルが見られ,二次構造を保持していることを確認した.EFSecがSec-tRNAsecと結合することによりEFSecの構造的に不安定な領域(C末端側)が安定となり(または隠れている部分が露出し),SBP2と相互作用できるようになるメカニズムが提唱されているが,これを証明するための実験系の構築を行うことができた.
|