2010 Fiscal Year Annual Research Report
プロトン輸送性ピロホスファターゼの作動機構の結晶学的解明
Project/Area Number |
22770098
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
三村 久敏 東京大学, 分子細胞生物学研究所, 助教 (30463904)
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Keywords | 膜輸送体 / プロトンポンプ / 高等植物 / 結晶化 / X線結晶解析 |
Research Abstract |
プロトン輸送性ピロホスファターゼ(H^+-PPase)はピロリン酸(PP_i)を分解し、H^+を能動輸送する膜蛋白質である。H^+-PPaseは植物、藻類、真正細菌や古細菌の一部、マラリア原虫などの寄生性原生動物に存在する。H^+-PPaseは高等植物の液胞膜において、液胞型ATPase(V-ATPase)と共に、液胞膜の二次能動輸送体にH^+駆動力を供給し、液胞を中心とした植物の物質輸送と蓄積を支える重要な一次能動輸送体である。その構造は分子量約8万の単一ポリペプチドがホモ2量体を形成し、それぞれのサブユニットが16本の膜貫通ヘリックスを含むと考えられる。アミノ酸配列からは、H^+-PPaseとこれまでに立体構造が明らかにされた蛋白質との間に構造類似性はほとんど見られない。可溶性無機ピロホスファターゼで保存された基質結合モチーフの類似配列がわずかに見いだされるのみである。本研究は、H^+-PPaseの作動機構の理解を目指し、X線結晶解析によって原子構造を明らかにすることを目的としている。平成22年度において、高等植物のH^+-PPaseの基質アナログ存在下における構造決定に成功した。その結果、新規構造であり、16本のヘリックスを含む単量体がホモ二量体を形成していることが確認された。また、膜を貫通するヘリックスは当初予想していたよりも遙かに長く、細胞質側まで伸び、基質アナログを結合していた。現在では基質アナログを加えていないものについても結晶が得られている。今後は基質アナログ存在下以外の状態での構造決定を目指す。
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