2011 Fiscal Year Annual Research Report
プロトン輸送性ピロホスファターゼの作動機構の結晶学的解明
Project/Area Number |
22770098
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
三村 久敏 東京大学, 分子細胞生物学研究所, 助教 (30463904)
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Keywords | 膜輸送体 / プロトンポンプ / 高等植物 / 結晶化 / X線結晶解析 |
Research Abstract |
プロトン輸送性ピロホスファターゼ(H+-PPase)は、ピロ燐酸(PP-1)を分解し、H+を能動輸送する膜蛋白質である。植物や藻類、真正細菌や古細菌の一部、マラリア原虫などの寄生性原生動物に存在する。高等植物におけるH+-PPaseは主に液胞膜に局在し、液胞型ATPase(V-ATPase)と共に液胞内腔の酸性化を行い、液胞膜の二次能動輸送体にH+駆動力を供給する。そのため、液胞における物質輸送と蓄積機能を支える重要な一次能動輸送体と言える。また最近では、細胞代謝の副産物として生じるPPi分解においても主要な役割を果たしていることが明らかにされている。その分子構造は分子量約8万の単一ポリペプチドがホモ2量体を形成し、単量体は16本の膜貫通ヘリックスを含む。本研究はH+-PPaseの作動機構の理解を目指し、X線結晶解析による原子構造の決定を目的とした。平成22年度では高等植物に由来するH+-PPaseの基質アナログ存在下における構造決定に成功した。膜貫通ヘリックスは当初予想していたよりも遙かに長く、細胞質側まで伸び、基質アナログを結合していた。一方で、作動機構を理解するためには異なる生理状態における構造比較も必要となる。平成23年度はこれまでとは異なる基質アナログを結合した状態、あるいは基質アナログを加えない状態での構造決定を目指した。結晶化条件を検討したところ、それぞれについてX線結晶解析に適用可能な結晶を得ることができた。異なる基質アナログを結合した状態の構造比較からは、プロトン輸送を行うために必要な構造変化の一端が垣間見えた。今後は、SPring-8における測定を通じて基質アナログを加えない状態の結晶化条件を最適化し、高分解能化を目指す必要がある。
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