2011 Fiscal Year Annual Research Report
D-アスパラギン酸の合成と分解に関わる酵素の構造と機能
Project/Area Number |
22770113
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Research Institution | Toho University |
Principal Investigator |
後藤 勝 東邦大学, 理学部, 講師 (80379289)
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Keywords | 酵素反応 / 立体構造 |
Research Abstract |
最近の研究によって生体内においてD-アミノ酸が重要な役割を果たしていることが明らかとなっている。そのなかでも遊離のD-セリンとD-アスパラギン酸は、脳において高濃度で確認されており、NMDAレセプターのコアゴニストや細胞間のシグナルである神経伝達物質として働くことで注目されている。D-アスパラギン酸は高等動物において広く分布しており、脳、網膜、脊椎動物や無脊椎動物の内分泌や外分泌組織で見つかっている。またD-アスパラギン酸は、胎児や出産直後に増加し、若年成人ではトレースレベルまで減少するという高等動物の発達にともなってその量が変化することを示されているが、成熟した高等動物では、内分泌系の組織のD-アスパラギン酸レベルは増加していることが見つかるなど興味深い性質を示す。高等動物の脳において、D-アスパラギン酸を合成する酵素は最近まで見つかっていなかった。生物がいかにして、D-アスパラギン酸を利用するために工夫してきたかを理解するために、D-アスパラギン酸の生成、代謝に関わるPLP依存性D-アスパラギン酸ラセマーゼおよびFAD依存性D-アスパラギン酸オキシダーゼのX線結晶構造解析を行い、基質認識機構、および、反応のメカニズムを明らかにすることを研究の目的とする。アカガイ由来のPLP依存性アスパラギン酸ラセマーゼについては、去年度の研究によってOpen型のネイティブ構造、活性化因子であるAMPとの複合体構造、阻害因子であるATPとの複合体の構造を決定することに成功し、この酵素のヌクレオチドによる活性の調節機構を分子レベルで考察することが可能となった。しかし、今年度の研究では、Closed型構造の結晶を得ることができず、基質特異性を明らかにすることはできなかったため、継続して研究を続ける必要がある。一方、酵母由来のFAD依存性D-アスパラギン酸オキシダーゼについては、重原子同型置換法によって位相の決定を行い、2.0A分解能でネイティブ構造の構築に成功した。この結果については、昨年の日本生化学会にてポスター発表した。
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Research Products
(2 results)