2011 Fiscal Year Annual Research Report
Akt修飾因子TTC3によるPI3K-Aktシグナル伝達制御機構の解明
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22770118
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
水津 太 北海道大学, 遺伝子病制御研究所, 助教 (90431379)
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Keywords | ユビキチン / タンパク質分解 / Akt / ダウン症 / 21トリソミー / リン酸化 / セリンスレオニンキナーゼ / TTC3 |
Research Abstract |
TTC3は、ヒト21番染色体長腕上のダウン症責任遺伝子領域に存在する機能未知遺伝子であった。これまでの研究で原癌遺伝子産物Akt をbaitとしたYeast Two Hybrid法によりTTC3が新規Akt結合因子として同定されさらに活性化Aktを特異的にポリユビキチン化するE3プロテインユビキチンリガーゼである事が、生化学的なアプローチによって明らかとなった。また、そのユビキチン化を介して、活性化Aktが、プロテアソーム複合体によって分解(不活性化)されることから、活性化Aktのdownregulationが、脱リン酸化によるものだけでなく、TTC3を介したユビキチン-プロテアソーム分解系によって制御される事が初めて証明された。(Suizu et al.Developmenta Cell 2009)本研究では、Aktの安定制御に関わる共同研究により東京大学グループとの共同研究により胎盤形成前,初期の妊娠維持に非常に重要な因子Death effector domain-containing protein(DEDD)がAktを安定化するタンパクである事を明らかにした。(Kurabe, N., Suizu, F., et al. J Biol Chem 2009)。またAkt活性化制御に関連する成果として、インフルエンザ由来NS1 タンパク質がAktを活性化し、宿主におけるウィルスの複製を有利にする働きのある因子であることを明らかにした。Matsuda, M., Suizu, F. et al.Biochem Biophys ResCommun (2010) さらにINSERM(フランス国立医学研究機構)グループとの共同研究により自閉症関連因子産物が、TTC3 と樹状突起において結合・協調し、Akt の活性修飾を担う因子である事が明らかになった。(submitted)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は機能性変異型TTC3や最適化修飾因子を発現させ、Aktの活性化を介した細胞増殖や細胞死に対する生物学的効果の検討を試みた。 1.細胞内におけるAkt活性の検討:ヒト神経細胞、またAkt活性の亢進がみられる腫瘍細胞株を用いて細胞内でのAkt活性への影響を比較検討する。 2.細胞増殖能への影響の検証:Akt活性の亢進した腫瘍細胞株における、TTC3または最適化修飾因子の細胞増殖への影響を解析する。 3.細胞死誘導に対する効果の検証:TTC3は、脳などの神経系組織に発現分布が集中しているため、神経細胞における細胞死(アポトーシス)制御の効果を検証する。 4. ダウン症由来iPS細胞の作成と機能解析:21トリソミーによって高率に発症する若年性アルツハイマー病に対するTTC3の生物機能の役割について詳細に検証するため、ダウン症皮膚細胞へのiPS誘導因子(OCT4, SOX2, KLF4, c-Myc)の導入によりダウン症由来iPS細胞を作成する。以上の研究計画のうち、上位項目の検証まで終了し、TTC3がAktの活性を抑制することによって、細胞増殖を制御する因子であることが明らかとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は、ホメオスターシス制御におけるTTC3の機能評価を行う予定である。 1. 腫瘍形成への影響に関する検証:2-2で遺伝子導入したヒト腫瘍細胞をCFDA染色後にヌードマウスに移植し、後に脾細胞を分離し、FACSによるCFDA色素を指標に細胞分裂能を解析する。さらに移植腫瘍における増殖抑制、ヒト腫瘍細胞やPTEN遺伝子や各種がん遺伝子変異腫瘍細胞株をSCIDマウスに移植し、触知可能な腫瘍径に達した時点で、TAT融合最適化修飾因子を腫瘍組織内に注入し、皮下増殖能を観察する。経時的に腫瘍組織を摘出し,H&E染色のほかTUNEL染色を施行し組織学的解析を施行する。Aktの発現とその活性化の評価に基づく病理学的意義に関する解析と特異的阻害剤の開発へ向けたin vivoでの解析を平行して行う。 2. トランスジェニックマウスを用いた機能解析:野生型、各種機能性変異型TTC3ならびに最適化修飾因子を過剰発現するトランスジェニックマウスを作成しTs65Dn、Ts1Cje、Ms1Ts65などのpoly-Transgenicダウン症マウスモデルとの比較、とくに脳発達障害やアルツハイマー病に特徴的なtauタンパク質の過剰なリン酸化、β-アミロイド斑の沈着、さらには記憶力、空間学習能力の行動学的解析に基づいたTTC3のin vivoにおける機能解析を行う。また、Akt活性の亢進がみられる各種腫瘍発生マウスとの交配による抗腫瘍効果の判定を通して、抗がん治療、臨床応用へ向けた生物効果の評価を行う。 3. 臓器特異的TTC3遺伝子欠損マウスを用いた機能解析:Cre-LoxP法によりTTC3 遺伝子conditionalノックアウトマウス作成し、臓器特異的なTTC3遺伝子欠損による表現型の解析、時間的、空間的な生物効果の評価を行い、TTC3によるin vivoでの生体ホメオスターシス制御機構を明らかにする。
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