2010 Fiscal Year Annual Research Report
時計タンパク質の多彩なリン酸化リズムに支えられた概日時計の振動原理に迫る
Project/Area Number |
22770122
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
吉種 光 東京大学, 大学院・理学系研究科, 助教 (70569920)
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Keywords | サーカディアンリズム / 時計タンパク質 / リン酸化シグナリング / 概日時計 / 転写制御 / DNA結合 / ChIP-Seq / 次世代シーケンサー |
Research Abstract |
交付申請書に記載の研究実施計画に沿って研究を遂行し、下記の成果を得た。 概日リズムは、生物が地球環境の24時間サイクルに適応して獲得した生理機能であり、概日リズムを生み出す生体計時システムは概日時計と呼ばれている。哺乳類の概日時計において、時計タンパク質であるCLOCKとBMAL1の複合体はDNAとの結合と解離を繰り返す。この約24時間周期のDNA結合リズムは分子発振に重要であるが、その制御機構は謎に包まれていた。申請者はこれまで、CLOCKのリン酸化がDNA結合を強力に抑制することを見出した。初年度ではまず、申請者が自作した特異的かつ高感度なモノクローナル抗体を用いて、マウス肝臓を出発材料にしたChIP解析を行い、定量的にCLOCK結合DNA断片を単離する実験条件を確立した。交付申請書の提出時点では、このDNA断片をマイクロアレイ解析に供する計画であったが、より網羅的な全ゲノム解析を目指して、次世代シーケンサーを用いたChIP-Seq解析を行った。得られた莫大なデータをもとにスーパーコンピューターを用いてin slico解析を行い、最終的に5,550のCLOCK結合領域を同定した。今後、同様の解析を様々な時刻に調整した肝臓に対して行うことにより、CLOCK-BMAL1がリズミックに結合しているDNA領域を網羅的に探索する。本年度ではこれと並行して、CLOCK-BMAL1リン酸化の責任キナーゼを探索した。その結果、c-Jun N-terminal kinase(JNK)を同定し、JNKシグナリングが細胞時計の周期調節と位相決定に重要な働きをしている可能性を見出した。今後これら一連の解析を進展させることにより、概日リズムの誘起原理を明らかにし、サーカディアン転写を巧みに制御するリン酸化シグナリングを解明する。
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Research Products
(6 results)