2011 Fiscal Year Annual Research Report
時計タンパク質の多彩なリン酸化リズムに支えられた概日時計の振動原理に迫る
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22770122
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
吉種 光 東京大学, 大学院・理学系研究科, 助教 (70569920)
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Keywords | 脳・神経 / サーカディアンリズム / リン酸化シグナリング / DNA結合 / ChIP-Seq / RNA-Seq / 次世代シーケンサー / 動物行動 |
Research Abstract |
交付申請書に記載の研究実施計画に沿って研究を遂行し、下記の成果を得た。 概日リズムは、生物が地球環境の24時間サイクルに適応して獲得した生理機能であり、概日リズムを生み出す生体計時システムは概日時計と呼ばれている。哺乳類の概日時計において、時計タンパク質であるCLOCKとBMAL1の複合体はDNAとの結合と解離を繰り返す。この約24時間周期のDNA結合リズムは分子発振に重要であるが、その制御機構は謎に包まれていた。申請者はこれまで、自作した特異的かつ高感度なモノクローナル抗体を用いて、マウス肝臓を出発材料にしたCh長P-Seq解析を行い、7,978のCLOCK結合領域を同定した。本年度には、同じマウスより調整した肝臓のtotalRNAに対してRNA-Seq解析およびsmall-RNA習Seq解析を行い、CLOCKの制御遺伝子が実際にリズミックに転写されていることを実証した。 これと並行して、CLOCK-BMAL1をリン酸化するキナーゼJNKの機能解析を進めた。JNK3KOマウスの行動解析を行った結果、恒暗条件下での行動周期が長い(KO;24.1±0.1hr,WT;23.6±0.2hr)ことに加えて、夜間の光照射に伴う位相シフトが大きく阻害されることが判明した。恒明条件では、マウスはアショフの経験則に従って光照度依存的に行動周期が長くなることが知られているが、このKOマウスはアショフの経験則に従わないことを見出した。このように、JNKは外界の光情報をBMAL1-CLOCK複合体にリン酸化シグナルとして伝達することにより、概日時計の周期や位相を決定することを明らかにし、原著論文として国際雑誌に発表した(Yoshitane et al.,EMBO Rep.,in press)o
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
申請時にはマイクロアレイを行う予定であったが、第二世代シーケンサーを使用することにより、格段に定量的で大規模なデータを取得することができた。さらに、リン酸化シグナルの解析も順調に進み、原著論文として国際雑誌に報告することが出来た。
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Strategy for Future Research Activity |
第二世代シーケンサーを用いたChlP-SeqおよびRNA-Seqの結果に基づいて、dryからwetへの還元を行っていく。 まずは、リアルタイムPCR法によりCLOCK制御遺伝子の時刻変動を確認するとともに、これらの機能解析を通じて生体機能リズムの分子基盤を解き明かす。
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