2011 Fiscal Year Annual Research Report
プロトン濃度勾配維持に関連する膜タンパク質の電子線結晶学を用いた構造機能解析
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22770147
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
谷 一寿 京都大学, 理学研究科, 特定助教(産官学連携) (20541204)
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Keywords | 電子線結晶学 / 膜タンパク質 / 二次元結晶 / 水チャネル / アクアポリン-4 / H+, K+-ATPase / 電子顕微鏡 / 三次元構造 |
Research Abstract |
本研究課題では、電子線結晶学を用いて膜タンパク質の立体構造を生体内に近い脂質二重膜内に存在する状態で観察することで、生理的な条件下でのプロトン濃度勾配維持を分子レベルで理解することに取り組んでいる。具体的には、1)プロトンの移動を伴わない水チャネルの高い水の選択性と速い水透過性機構、2)H+,K+-ATPaseのプロトン逆流を防ぐラチェット機構を、極低温電子顕微鏡から得られたデータを用いて立体構造を決定し、機能と構造との相関を調べることで、生理的条件下での分子の振る舞いを理解することを目指す。本年度の成果に関しては、水透過を妨げる水銀等の阻害剤と水チャネルアクアポリン-4(AQP4)に対する水透過アッセイの実験結果から、阻害効果の高い物質を特定することができた。現在、これらを作用させた二次元結晶を作成し構造解析を進めている。また、H+,K+-ATPaseに関しては、リン酸化アナログの1つであるAlFxとRb+の結合型構造の構造解析を進めており、E2状態におけるRb+に相当するデンシティを膜貫通領域内で可視化することに成功しつつある。現在のところ8Å分解能程度であるが、膜貫通ヘリックスも分離して見えており、更にデータを収集することで密度マップの信頼性の向上を期待している。また、これらの構造解析における根幹として位置づけている電子線結晶解析ソフトウェア開発も順調に進んでおり、迅速に解析結果が得られるようになってきた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
電子線結晶解析のためのプログラム開発も順調に進んでおり、その結果、本研究課題が採択されてから既に水チャネルアクアポリン-4、H+,K+,-ATPase、ギャップ結合チャネルのコネキシン26の野生型およびN末端欠損型、計4つの立体構造を決定することができた。これらの成果は既に査読論文として発行されており、さらに構造情報データは、座標の場合rcsb、密度マップの場合emdbへそれぞれデータを登録し、多くの研究者に利用してもらえるよう公開している。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでのところ順調に研究計画は進めることができており、当初の予定通り、さらなる構造解析プログラムの高速処理化に向けた開発、および水チャネルやH+,K+-ATPaseといった膜タンパク質に対して薬剤や阻害剤などを作用させた状態の立体構造決定も併せて続けていく予定である。
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Research Products
(2 results)