2011 Fiscal Year Annual Research Report
高圧NMRによるプリオン蛋白質の励起構造とその構造特異性の解析
Project/Area Number |
22770158
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Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
前野 覚大 近畿大学, 先端技術総合研究所, 研究員 (70570951)
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Keywords | プリオン蛋白質 / 核磁気共鳴 / 圧力 / 励起構造 |
Research Abstract |
異常型プリオン蛋白質PrP^<Scrapie>は正常型プリオン蛋白質PrP^cを次々とβ-構造に富む異常型に変換(感染・伝播)し、その後の自発的な凝集(オリゴマー)・アミロイド線維化を誘発することでプリオン病が発症すると考えられている。代表者は数%にも満たない低い分布率で熱力学的に存在する蛋白質の"励起構造"アンサンブルが、これらプリオン蛋白質に起因する感染・伝播機構および動物種間感染の障壁に関して重要な鍵を握ると考えている。 そこで蛋白質"励起構造"の定性的な解析が可能な高圧NMR法と定量解析に適したNMR横緩和分散法(CPMG法)を組み合わせることで、正常型及び異常型プリオン蛋白質における両者の励起構造の違いを明らかにする事を目的としている。 本年度は、初年度に確立した発現プロトコルをM9培地へと適用し、正常型ハムスタープリオン蛋白質(haPrP^c)の大量発現に関して条件検討を行った結果、約17mg/1_<culture>の蛋白質量を得た。その後、多次元NMR測定用に窒素源を^<15>N-塩化アンモニウムに変え同等量の安定同位体標識試料を得ることができた。 ^<15>N-haPrP^cに対して高圧NMR測定(^~3000気圧)とNMR横緩和分散測定(@1000気圧)を行った。高圧NMR測定では分子内空隙(キャビティ)周辺に特異的な構造揺らぎが検出されたが、1000気圧で行ったCPMG測定では十分な横緩和分散プロファイルが得られなかった。横緩和分散法では1%程度の分布率で存在する"励起構造"が検出の対象となるが、1000気圧(25℃)の条件はそれには不適当であったと考えられる。現在、温度・圧力軸で条件を変えながら^<15>N-haPrP^cの"励起構造"を解析する最適条件を検討している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
多次元NMR測定用の^<15>N安定同位体標識haPrP^cの大量培養及び精製プロトコルの確立までに当初の予定(1年間)よりも時間を要した(1.5年)。また、圧力下でのNMR横緩和分散測定による励起構造の検出を1000気圧(25℃)下で試みたが解析に十分なスペクトル変化が観測できなかった。同法で対象となる励起構造は、常圧下で数%の分布率を持ち、基底状態との間でμs-msオーダーの化学交換をする構造状態であるが、その検出に十分なレベルにまで分布率を増やしてやる圧力及び温度の測定条件を厳密に設定する必要があるようだ。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)高圧NMR法による励起構造を含むPrP^cの構造揺らぎを調べ、そのデータを基にNMR横緩和分散法を行う圧力・温度の条件を決定する。 (2)同様の実験を病原性プリオン変異体へと拡張し、プリオン病の発症機構に蛋白質"励起構造"の特異性がどのように関わっているかを調べる。
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