2011 Fiscal Year Annual Research Report
計算機シミュレーションによる一酸化窒素還元酵素の機能解析
Project/Area Number |
22770163
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
ピシリアコフ アンドレイ 独立行政法人理化学研究所, 杉田理論生物化学研究室, 国際特別研究員 (70565770)
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Keywords | MD simulation / water dynamics / proton transfer / nitric oxide reductase / membrane proteins |
Research Abstract |
一酸化窒素還元酵素(NOR)は細菌の細胞膜に存在する金属酵素で、一酸化窒素(NO)を還元し亜酸化窒素(N2O)を生成する。これまで、2つの一酸化窒素還元酵素(cNORとqNOR)の膜環境下における全原子古典分子動力学(MD)計算を行い、タンパク質中の水のダイナミクス及び膜貫通領域にある活性中心へのプロトン輸送経路を検討した.その結果、cNORとqNORはお互いに良く似た構造をとっているにも関わらず,プロトンを取り込む機構が著しく異なることがわかった。前者ではペリプラズムから、後者では細胞質からプロトンが運ばれている。NORの進化過程はチトクロムc酸化酵素と深く関わっていると考えられており、両者のプロトン輸送経路を比較することで進化過程を明らかにすることが出来るかもしれない。そこで、cNORとqNORのミュータントのMD計算を行った。また、重要な残基のプロトン化状態を特定するためにpKa計算を行った。pKa計算の結果は、これまでの実験データと良い一致を示す。興味深いことに、cNORのミュータント(I224Q/F290E)の計算結果は、これらの置換により、WildTypeでは見られなかった細胞質への水チャネルが開かれることを示唆する。このチャネルは、cbb3酸化酵素にみられるチャネルの構造やプロトン輸送と多くの類似性を示しており、2つの酵素が進化過程で密接に関わっていることを裏付ける。以上の結果は、HCOファミリーに属する呼吸系酵素でどの様にしてプロトン輸送経路が構築されてきたかを知る糸口となる。
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Research Products
(8 results)