2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22770196
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Research Institution | Gakushuin University |
Principal Investigator |
谷口 喜一郎 学習院大学, 理学部, 助教 (20554174)
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Keywords | ショウジョウバエ / 二核細胞 / 多核細胞 / 生殖器附属腺 / 有糸分裂 / 細胞質分裂 / 中心紡錘体 / 収縮環 |
Research Abstract |
動物細胞は、細胞融合が無い限り、細胞室内に核を一つのみ保有する。しかしながら、ある種の細胞では、細胞質分裂を伴わずに核分裂のみが行われることで、二核状態が作り出される。しかしながら二核化機構およびその意義については不明な点が多い。本研究では、二核細胞のモデルとしてショウジョウバエ附属腺を用いている。 申請者は、二核化の意義を調べるために、通常は二核細胞のみからなる附属腺において、一核細胞の創出を試みた。22年度の研究において、mad2のノックダウンやfzrの強制発現により一核細胞を人為的に作り出すことに成功した。23年度の研究では、人為的に作り出した一核細胞の機能を二核細胞と比較することで、二核化の意義を解析した。その結果、核の数は機能的分化に影響を与えないことが示唆された。一方で、一核細胞からなる附属腺は、二核細胞からなる正常な附属腺と比べ、器官内腔サイズの柔軟性に乏しい事が明らかになった。附属腺は外分泌器官であり、内腔サイズを柔軟に変化させることで、分泌タンパク質の保持・排出を効果的に行う。二核細胞は細胞内での核の配置を変化させることで、器官形態の柔軟性を生みだしていることが示唆された。 さらに申請者は、二核化を制御する遺伝子の探索を行ってきた。22年度の研究において、二核化に関与する遺伝子として、mad/NuMAおよび#27(責任遺伝子未同定)を得ることに成功した。23年度の研究において、mad/NuMAのスプライシングバリアントの一つに中心紡錘体形成を抑える働きがあることがわかった。実際に、分裂細胞でmad/NuMAを強制発現させることで、細胞質分裂が抑えられ二核化を誘導できた。また、#27突然変異体の責任遺伝子の同定を試みた。その結果、責任遺伝子はAuroraBであることが示唆された。現在、責任遺伝子を確定させるため、ゲノム断片を用いた救済実験を試みている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
23年度までに実施を計画していた研究は、"附属腺における一核細胞の人為的創出"、"二核化の優位性の検証"、"二核化制御遺伝子の検索・同定"、"同定された遺伝子の機能解析"である。これらの研究計画については、研究実績に示したように予定通り遂行されている。以上を踏まえて、現在までの達成度は、"(2)おおむね順調に進展している"とした。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの結果から、附属腺細胞の二核化は、生殖を有利に進める上で重要な役割を果たしている事が示唆された。今後の研究において、一核細胞のみからなる附属腺を人為的に創出することで、二核細胞の場合と比べ生殖能力にどのような違いが出るのか検証する予定である。また、二核細胞はショウジョウバエのみならず、哺乳類の肝細胞(hepatocyte)等でも見られることが知られる。これまでの研究により明らかになった、二核化によって生み出される、細胞形態の柔軟性・器官形態の柔軟性といったものが、他の器官でも適応できる物かを検証する。ラット肝細胞の初代培養により、この問題に取り組むことを予定している。
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