2011 Fiscal Year Annual Research Report
動原体のストレッチングによって促進されるM期チェックポイントの解除機構
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22770200
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Research Institution | Japanese Foundation For Cancer Research |
Principal Investigator |
内田 和彦 公益財団法人がん研究会, がん研究所・実験病理部, 研究員 (40380555)
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Keywords | 細胞周期 / 紡錘体チェックポイント |
Research Abstract |
平成23年度は、動原体ストレッチング(動原体と紡錘体微小管とが結合しているとき動原体が伸長や収縮を繰り返す現象)の発生機構について検討した。これまでの研究により、微小管の重合による伸長と脱重合による収縮が動原体を変形させ、それによってストレッチングが発生することが示された。実際、細胞を低濃度のAurora Bキナーゼの阻害剤で処理することで動原体と微小管との結合を安定化(Aurora Bは結合をある一定の割合ではずしているので、その働きを阻害すると結合が安定化する)させ、それによって微小管の動態を動原体に伝わりやすくすると、ストレッチングの頻度が増加した。この実験は人為的に動原体と微小管との結合を安定化させた場合の結果であるが、このような結合の安定化は自然な条件でも生じるのかもしれない。すなわち姉妹動原体間に分布しているAurora Bはダイナミックに局在を変えること、そしてAurora Bが動原体から離れたとき結合が安定化すること、が考えられた。またそれによって動原体ストレッチングが生じると思われた。この仮説を検証した結果、実際にAurora Bはダイナミックに局在を変えていること、そしてAurora Bから遠く離れた動原体では、近い場合と比べてAurora Bの基質のリン酸化が減少し、そして動原体ストレッチングの発生頻度が増加していることが示された。これらの結果はAurora Bのダイナミックな局在変化が動原体ストレッチングの発生をもたらす可能性を示している。 これまで微小管の引く力によって動原体間セントロメアや動原体が受ける張力と関連したチェックポイント機構というものが議論されてきた。一方動原体のストレッチングも紡錘体チェックポイント機構と関連があることが示されているが、本年度の研究により動原体ストレッチングは張力とは全く別の機構で発生することが示された。このことから「動原体ストレッチングが関与する紡錘体チェックポイント機構」は「張力が関与するチェックポイント機構」とは異なる新奇な機構であることが予想される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究の目的は1)動原体ストレッチングを発生させるしくみの検討と、2)動原体ストレッチングによるチェックポイント解除機構の検討であるが、1)についてはおおむね終了している、これが理由の第一である。また予定では1)の研究結果を応用して2)の研究を行うこととなっているが、研究の進展によりそれが可能になっている、これが理由の第二である。
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Strategy for Future Research Activity |
研究の目的は1)動原体ストレッチングを発生させるしくみの検討と、2)動原体ストレッチングによるチェックポイント解除機構の検討であるが、1)についてはおおむね終了したことから、1)に関する論文を作成する。 それと同時に2)を推進する。すなわち動原体ストレッチングを抑える(または増加させる)と、候補となる解除機構にどのような変化が見られるのかを調べる。その結果を検討することで、微小管が動原体を捉えた後にチェックポイントがどのように解除されるのかを明らかにする。
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Research Products
(1 results)