2010 Fiscal Year Annual Research Report
letー7マイクロRNA依存的発生タイミング経路のゲノムワイド解析
Project/Area Number |
22770207
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
丹羽 隆介 筑波大学, 大学院・生命環境科学研究科, 助教 (60507945)
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Keywords | 発生・分化 / 発現制御 / 線虫 / 発生タイミング / マイクロRNA / 転写因子 / 核内受容体 / クロマチン構造制御因子 |
Research Abstract |
【1】アミロイド前駆体様分子apl-1を利用した発生タイミング関連遺伝子のスクリーニング アルツハイマー病アミロイド前駆体タンパク質の線虫類縁遺伝子apl-1の発現は、幼虫から成虫への発生運命転換に必要なlet-7マイクロRNAによって成虫期に負に調節される。この性質を利用して研究代表者は、apl-1プロモーター領域とGFP領域との融合コンストラクトを導入したトランスジェニック線虫系統を利用して、apl-1の発現を指標とした網羅的なRNAiスクリーニングを実施し、let-7依存的な幼虫→成虫スイッチングに関わる遺伝子を探索した。 【2】成虫化を制御する核内受容体NHR-25の機能解析 上述のRNAiスクリーニングで見出された遺伝子の1つは、進化的に保存された核内受容体をコードするnhr-25であった。nhr-25はapl-1の発現調節のみならず、上皮細胞分裂の停止、上皮細胞の融合、成虫特異的コラーゲン遺伝子の発現など、幼虫から成虫への分化の幅広い現象に関与していた。さらに、apl-1上流域に存在する核内受容体結合コンセンサスモチーフが、NHR-25依存的なapl-1の発現制御に必須であることが分かった。nhr-25は進化的に高度に保存された遺伝子であることから、今回の研究成果は動物一般の発生タイミングの理解にもつながるものと期待できる。 【3】成虫化を制御するクロマチン構造制御因子の同定と機能解析 また、上述のスクリーニングから、ヒストン脱アセチル化酵素やヒストンメチル化修飾酵素など、クロマチン構造の制御に関わると予想される因子も複数見出された。そして、そのうちの1つsae-1(仮称)は、apl-1の発現だけでなく、他の成虫化過程にも関与することが判明した。このことは、多細胞生物の発生が成熟する過程において、エピジェネティックな制御の重要性を示唆するものと考えられる。
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