2011 Fiscal Year Annual Research Report
新規の表皮内ライブイメージング法を用いたメラニン色素輸送の解析
Project/Area Number |
22770217
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
田所 竜介 奈良先端科学技術大学院大学, バイオサイエンス研究科, 助教 (50425633)
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Keywords | 色素細胞 / 角化細胞 / メラニン顆粒(メラノソーム) / 色素沈着 / 細胞間輸送 |
Research Abstract |
表皮の色素細胞において産生されたメラニン顆粒は、のちに周囲の角化細胞に輸送されることにより表皮に沈着する。本研究は申請者が立ち上げた表皮ライブイメージング法により見出した、1)色素細胞が膜ブレッブを起こす、2)メラニン顆粒が色素細胞の細胞膜に包まれて放出される、3)膜小胞が角化細胞に取り込まれるという一連の輸送過程のメカニズムを明らかにする。平成22年度に行った1)膜ブレッブのメカニズムの解析に続き、平成23年度は主に2)膜小胞の放出および3)角化細胞による取り込みについて解析を進めた。 1)膜小胞の放出膜;小胞の放出機構を明らかにするため、周囲の角化細胞との相互作用に注目して解析を進めた。初めに移植などの手法を用いて、色素細胞の成熟度合やメラニン合成量に関わらず、膜小胞の放出タイミングが周囲の環境に依存する可能性を見出した。表皮に発現する遺伝子を探索した結果、ヒトの日焼け時の表皮において発現する分子群が、トリ胚表皮においても発現することが明らかになった。さらにこれらの遺伝子の発現は、色素輸送が開始する胚発生10日目に向けて上昇することが示されるなど、膜小胞の放出に関わる分子の実態が徐々に明らかになりつつある。 2)角化細胞による膜小胞の取り込み;膜小胞が貧食および膜融合のどちらによって取り込まれるのかを明らかにするために、膜小胞を緑蛍光(膜局在型EGFP)によって、そして表皮細胞を赤色蛍光により染色して膜小胞の取り込みを観察した。もしも、膜融合の場合は両蛍光が混ざり、貪食の場合は緑色の膜小胞が角化細胞の中に観察されると予想される。共焦点顕微鏡により光学断層撮影を行った結果から、膜小胞が貪食により取り込まれることを明らかにした。 以上、本研究の目的であった色素輸送過程について理解を深めることができた。これらの結果は、細胞間輸送の基本原理を理解するために重要であるのみでなく、化粧品開発や医療分野への応用が期待される。
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