2010 Fiscal Year Annual Research Report
生殖細胞運命決定をエピジェネティック修飾により制御するSall4遺伝子の機能解析
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22770220
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
山口 泰華 熊本大学, 発生医学研究所, COEリサーチアソシエイト (90448522)
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Keywords | 生殖細胞 / 細胞運命決定 / エピジェネティック修飾 |
Research Abstract |
マウス生殖細胞の分化・運命決定は、体細胞プログラムの抑制と幹細胞プログラムの活性化により制御される。Sa114遺伝子は、胚発生過程において必須な役割を担う転写因子であり、特にES細胞等では、分化抑制とその幹細胞維持に重要な転写因子ネットワークを制御していることが知られる。すでに我々はSa114が生殖細胞発生に必須な役割を担うことを明らかにしたが、本研究計画では、さらに踏み込んでSa114に依存したエピジェネティックなゲノム修飾変化による生殖細胞-体細胞運命決定に関わる転写プログラムの制御機構を明らかにすることを目指した。 生殖細胞運命決定の際に抑制される体細胞プログラム、Hoxa1およびHoxb1の発現を調査し、Sa114を欠損した生殖細胞では、これらの遺伝子の抑制が解除され、異常に高発現することを見つけた。また、ゲノム上のHoxa1遺伝子にSa114タンパク質が結合することから、Hoxa1はSa114の標的遺伝子であることが示唆された。さらにHoxa1の抑制因子としてPrdm1が報告されているが、本研究ではSa114結合領域にPrdm1タンパク質が結合すること、Sa114とPrdm1がタンパク同士で複合体を形成することから、Sa114はPrdm1と協調的に働いてHoxalの発現を抑制するという分子実態を明らかにした。制御機構の詳細、特にエピジェネティックなゲノム修飾変化については現在調査中である。Sa114遺伝子を欠損し、異常になった生殖細胞は、幹細胞プログラムの活性化を維持するが、生殖巣への移動を開始せず、胚体内に留まって細胞死を起こした。今後、Sa114遺伝子の転写調節の分子機構をさらに詳しく解明することによって、生殖細胞の運命決定機構のみならず、Sa114遺伝子が原因遺伝子である遺伝病Okihiro症候群の原因解明・新たな治療法の確立へと展開できる可能性がある。
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