2010 Fiscal Year Annual Research Report
エピジェネティクスは適応進化の素材となりうるか?-シロイヌナズナ属野生種を材料に
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22770231
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
田中 健太 筑波大学, 大学院・生命環境科学研究科, 助教 (80512467)
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Keywords | 耐寒性 / 開花タイミング / 発芽タイミング / 母性効果 / 標高適応 / 野外移植実験 / ゲノム塩基変異 / ゲノム修飾変異 |
Research Abstract |
母親が異なる環境を経験している実験室第一世代と、母親が共通の実験室環境を経験している実験室第二世代の間で、形質がどの程度異なるのかを確かめるために、耐寒性よりも条件設定が容易な開花タイミングと発芽タイミングについて測定した。ミヤマハタザオ28集団、タチスズシロソウ9集団を共通の実験室で栽培実験し、長日・20度C条件では標高が高い集団ほど発芽も開花が早いという明瞭な結果がえられ、そこに世代がどのように効果を与えているかを現在解析中である。 耐寒性に関しては、低温馴化なしの条件でミヤマハタザオ2集団・タチスズシロソウ1集団を用いて予備実験を行い、高標高ミヤマハタザオとタチスズシロソウの凍結耐性が低標高ミヤマハタザオよりも著しく高いことが分かった。集団間で耐寒性に差があることが分かったので、今後は、表現型可塑性(低温馴化)と母性効果が耐寒性とどのように関わるのか調べていく。 ミヤマハタザオ28集団・タチスズシロソウ8集団を、低・中・高標高の圃場に移植する実験を行った。高標高圃場では移植植物が全滅してしまったが、低標高圃場では低標高集団の適応度が、中標高圃場では高標高集団の適応度が高いことが分かった。異なる標高で異なるゲノム修飾を獲得しているかどうかを確かめるDNA実験のための葉のサンプリングと、その修飾が次世代に受け継がれるかを調べる種子のサンプリングを行った。 アジレント社のシロイヌナズナ用マイクロアレイを用いて、高標高ミヤマハタザオ・低標高ミヤマハタザオ・タチスズシロソウ各8集団のゲノム塩基多型を調べた。既知の耐寒性遺伝子には変異は見つからなかったが、多くの低温応答遺伝子に変異が見つかったので、今後、これらの遺伝子と耐寒性の関係や、ゲノム修飾変異について興味を持って研究を進めていく。
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