2012 Fiscal Year Annual Research Report
エピジェネティクスは適応進化の素材となりうるか?-シロイヌナズナ属野生種を材料に
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22770231
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
田中 健太 筑波大学, 生命環境系, 准教授 (80512467)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 開花タイミング / 表現型 / ゲノム塩基変異 / 母性効果 / 標高適応 / 野外移植実験 |
Research Abstract |
検討する表現型として、耐寒性よりも条件設定が容易な開花タイミングなどの生活史形質について研究を進めている。母親が異なる環境を経験している実験室第一世代と、母親が共通の実験室環境を経験している実験室第二世代の間で、開花タイミングに世代がどのように効果を与えているかを長日条件の実験室で栽培して解析し、低標高の集団では、第二世代の方が第一世代より、春化処理が開花を促進する効果が大きいことを明らかにしていた(前年度)。高標高の集団では夏に開花するので短日条件化の表現型変異も興味深い。そこで同様の実験を短日条件下で行い、結果を解析中である。 ミヤマハタザオ28集団・タチスズシロソウ8集団を、低・中・高標高の圃場に移植する実験を継続して行った。これまでに、特に夏の生存率においてホームサイトアドバンテージが見られている。それぞれの移植圃場においてどんなエピジェネティックな修飾を獲得したのかを調べるための葉サンプリングと、それが次世代に伝わるかを調べるための種子サンプリングも継続し、十分なサンプルが集まった。 標高適応の候補遺伝子として、GL1(トライコーム遺伝子)・CRY1(青色光受容体遺伝子)・PHYB(赤色光受容体遺伝子)を対象にして、次世代シーケンサー(454 GS Junior)によってミヤマハタザオ20集団の各20個体の塩基配列を決定する実験を行い、これらの遺伝子が集団間で著しい分断化効果を受けていて、対立遺伝子頻度が標高によって異なっていることが分かった。GL1については、遺伝子型と表現型の関係も明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初予定よりも多数の標高適応形質の同定に成功した一方で、エピジェネティクスの解析が遅れている。当初計画していたマイクロ・アレイによる解析では必要なDNA量が多いために、齢の異なる葉などを全て混ぜてDNA抽出しなければならず、環境応答性の検出に不利だった。また、免疫沈降を再現性高く行うのも容易ではない。しかし、次世代シーケンサーを用いたゲノムワイドな解析のコストが大幅に下がったため、次世代シーケンサーを用いたエピジェネティクスの解析を進めたい。
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Strategy for Future Research Activity |
次世代シーケンサーを用いたエピジェネティクス検出法として、バイサルフェイト解析の利用を検討する。この方法では詳細なリファレンスシーケンスが必要なので、それを取得中の共同研究者と連携しながら進めていく。
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