2011 Fiscal Year Annual Research Report
消化管内微生物叢からみた食性の適応進化に関する研究
Project/Area Number |
22770234
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
篠原 明男 宮崎大学, フロンティア科学実験総合センター, 助教 (50336294)
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Keywords | 食性 / 進化 / 消化管内微生物叢 / 16S rRNA / トリトンハムスター / 複胃動物 |
Research Abstract |
哺乳類の消化管内に共生する微生物叢は、食物の栄養利用に大きく寄与していることが明らかとなっている。大型動物を用いた研究成果から、草食動物の消化管内微生物叢は、肉食動物の消化管内微生物叢よりも複雑な生態系を構築していることが明らかとなっている。しかし、小型哺乳類にも多種多様な食性が存在し、囓歯目のように雑食性から草食性の種まで様々な食性が含まれる分類群や、食虫目のような食性の均一な分類群もある。分類群と食性には、なんらかの進化学的因果関係が存在していることが考えられるが、小型哺乳類における食性の進化について消化管内微生物叢に着目して行われた研究は殆どない。そこで本研究では、小型哺乳類の消化管内微生物叢を16S rRNA遺伝子を用いて分子生態学的に同定し、食性の進化を消化管内微生物叢の多様性の観点から検討することを目的とした。平成23年度は、飼育下のトリトンバムスターTscherskia tritonの消化管内微生物叢を解析した。トリトンハムスターは雑食性でありながらも、繊維質飼料だけで飼育が可能であり、比較的に草食傾向が強いだけでなく、発達した前胃と盲腸という前胃発酵動物と後腸発酵動物の両者の形態学的特徴を有する種である。前胃および盲腸内容物から抽出したDNAから微生物叢の16S rRNA遺伝子の塩基配列を解析したところ、前胃内微生物叢の81.3%がLactobacillus属(乳酸菌)となり、多様性が低かったのに対して、盲腸内微生物叢の多様性は、後腸発酵動物であるウサギの盲腸内微生物層に匹敵する高さであることが示され、さらにRuminococcus属と高い相同性を示す配列も検出された。この結果から、トリトンハムスターでは盲腸内微生物叢が繊維分解に寄与し、前胃が補助的な発酵槽として機能していることが推察された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成22年度の実験結果が妥当であるかどうかを検証するため、再実験と実験方法の見直しをおこなったため、平成23年度に予定していた野生由来雑食性動物の実験進行が遅れている。しかし、本年度に行った実験方法の検証によって実験手法が整備され、さらには野外捕獲調査も当初の予定よりも順調に進んでいることから、来年度中に遅れを取り戻せる予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度の実験は、飼育下動物ではなく、野外捕獲してサンプルの準備が整っている草食性のハタネズミMicrotus montebelliや、雑食性のアカネズミApodemusspeciousの消化管内微生物叢の同定を行う。また、これまでに捕獲した昆虫食性のコウベモグラMogera woguraのサンプルには、消化管内微生物叢の解析には適さない若齢個体が含まれていたことから、来年度の野外捕獲は、コウベモグラのサンプル数増加を最優先として行う。
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Research Products
(1 results)