2011 Fiscal Year Annual Research Report
ヒトのコーディング領域トリプレットリピートの進化的意義
Project/Area Number |
22770239
|
Research Institution | The Graduate University for Advanced Studies |
Principal Investigator |
五條堀 淳 総合研究大学院大学, 先導科学研究科, 助教 (00506800)
|
Keywords | 人類学 / ゲノム / 進化 / アミノ酸リピート / 脊椎動物 |
Research Abstract |
本研究では、脊椎動物ゲノム中のコーディング領域におけるトリプレットリピート(アミノ酸リピート)の進化的背景を明らかにする事を目的としている。このようなリピートはヒトの遺伝病の原因遺伝子に含まれ、リピートの異常な長さが病気を起こす事が知られている。病気の原因となるような形質をなぜ高等脊椎動物、あるいは特にヒトは持つようになったか?と言う点を、ダーウィン医学的な視点から明らかにしたい。昨年度までにヒトと他の霊長類、マウスやラットなどの他のほ乳類に加え、両生類の熱帯ツメガエルゲノム中よりアミノ酸リピートを持つ遺伝子を抽出し、ヒトの遺伝子と相同である203個の遺伝子を同定した。今年度はこれらの遺伝子について解析を行った。熱帯ツメガエルの203個の遺伝子に含まれるリピートは239個であった。特にアラニン、グリシン、グルタミン、リシンのリピートはリピート長が長くなる傾向がある事が分かった。ヒト、マウス、熱帯ツメガエルの3種の比較では239個のリピートのうち、三種全てにリピートが見られた、あるいはリピートの元となるアミノ酸が見られたものは136個、哺乳類であるマウスとヒトのみにリピートが見られるものは91個、そしてヒトのみに存在するリピートは12個であった。三種間で共通に見られるリピートのうち、熱帯ツメガエル、マウス、ヒトの順にリピート数が増加している配列は41個であり、約1/3を占める。これらの配列をアミノ酸別に分類してみると、グルタミン酸とグリシンが約半数を占めることがわかる。熱帯ツメガエル・ヒト間ではヒトの方が熱帯ツメガエルより長いという配列がほとんどで、リピート数が保存されている配列は少ない事が分かり、脊椎動物の進化の過程でアミノ酸リピートが大きく変化している事が分かった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
脊椎動物ゲノムからのアミノ酸リピートを含む遺伝子の抽出に時間がかかったため、当初の目標としていた新しいアミノ酸リピート進化モデルの構築が進んでいないため。しかし、ほ乳類以外の脊椎動物の遺伝子の解析結果から、よりヒトのアミノ酸リピートの進化の傾向がはっきりして来たので、全ゲノム塩基配列の比較からヒトの進化を明らかにする点では、期待以上の研究の成果を得ている。
|
Strategy for Future Research Activity |
これまで全ゲノム塩基配列が得られていなかったゴリラ等の新しいゲノムデータベースが公開された。今後はこれらの新情報を使い、ゲノム中の塩基配列の組成とリピート遺伝子の関係をより詳細に検討する。この結果により、新しいアミノ酸リピートの進化モデルに対して、「ゲノム中の塩基配列の組成の変化」をモデルに組み込む事が可能になるため、これに挑戦して、より詳細な進化モデルの構築を試みる。
|
Research Products
(3 results)