2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22770245
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Research Institution | Fukuoka Women's University |
Principal Investigator |
福田 裕美 福岡女子大学, 人間環境学部, 助手 (50551412)
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Keywords | 生理人類学 / メラノプシン神経節細胞 |
Research Abstract |
本研究は、光刺激に対する生体反応への、メラノプシン網膜神経節細胞(mRGC)の寄与を明らかにすることを目的としている。従来、人間の光受容器はLMSの3つの錐体と桿体のみであると考えられてきたが、最近網膜上の新たな光受容器の存在が明らかになった(Daceyら、2005)。この新しい光受容器がメラノプシン網膜神経節細胞(mRGC)であり、光の生体リズム制御を代表とする非視覚系情報処理への寄与が動物実験で報告されている(Hattarら、2003)。人間に関しても、網膜上に存在するmRGCが非視覚系受光器として関与していると推測されるが、その分光感度を直接的に示した報告はない。本研究では、多原色光源装置を用いてmRGCを錐体や桿体から独立に刺激し、網膜電図(ERG)を用いて直接的にその興奮度を把握する。この研究成果は、網膜に入力される輝度や色などの画像信号(視覚情報)の変化を最小限にし、生体リズムを調整する可能性をもたすものである。運転時や作業時における照明による覚醒度や生体リズムの調整、多くの人が抱えている睡眠障害の改善、海外旅行による時差を飛行機内の照明によって調整できる可能性も示唆され、その潜在的な応用範囲は多岐にわたると考えられる。 平成22年度は、光刺激の強度変化及び周波数変化に対するmRGCの挙動特性を把握した。その結果、刺激の強度とmRGCの反応には、量-反応関係があることが分かった。一方、周波数変化に対するmRGCの反応は単純ではなく、その一因として視神経路におけるフィードバック作用が示唆された。また、30Hz以上の刺激に対してmRGCの反応が抑制さえる可能性も示された。これらの結果については今後詳細に検討する必要があるが、生体リズム制御に関わる照明研究に貢献するものと考えられる。
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