2011 Fiscal Year Annual Research Report
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22770245
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Research Institution | Fukuoka Women's University |
Principal Investigator |
福田 裕美 福岡女子大学, 人間環境学部, 助手 (50551412)
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Keywords | 生理人類学 / メラノプシン神経節細胞 |
Research Abstract |
本研究は、光刺激に対する生体反応への、メラノプシン網膜神経節細胞(mPGC)の寄与を明らかにすることを目的としている。従来、人間の光受容器はLMSの3つの錐体と桿体のみであると考えられてきたが、最近網膜上の新たな光受容器の存在が明らかになった(Daceyら、2005)。この新しい光受容器がメラノプシン網膜神経節細胞(mRGC)であり、光の生体リズム制御を代表とする非視覚系情報処理への寄与が動物実験で報告されている(Hattarら、2003)。人間に関しても、網膜上に存在するmRGCが非視覚系受光器として関与していると推測されるが、その分光感度を直接的に示した報告はない。本研究では、多原色光源装置を用いてmRGCを錐体や桿体から独立に刺激し、網膜電図(ERG)を用いて直接的にその興奮度を把握する。この研究成果は、網膜に入力される輝度や色などの画像信号(視覚情報)の変化を最小限にし、生体リズムを調整する可能性をもたすものである。運転時や作業時における照明による覚醒度や生体リズムの調整、多くの人が抱えている睡眠障害の改善、海外旅行による時差を飛行機内の照明によって調整できる可能性も示唆され、その潜在的な応用範囲は多岐にわたると考えられる。 平成22年度に光刺激の周波数・強度変化に対するmRGCの挙動特性を把握したことを踏まえ、平成23年度はmRGCと従来から知られている光受容器である錐体との挙動特性の違いについて確認した。その結果、RGCと錐体それぞれを刺激した場合のERG波形は異なることが分かった。この違いは、光に対してmRGCが比較的遅い脱分極性の応答、錐体が速い過分極性の応答を示すことに起因する可能性が考えられる。また、mRGCの光反応における日内変動をERGで測定した結果、日中と夜間ではその挙動が異なることが示唆された。これらの結果については、今後詳細に検討する必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成22年度および平成23年度に計画した研究内容はすべて実施できていることから、おおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度は本研究の最終年度であることから、平成22年度および平成23年度の研究結果の考察とまとめを進める。また、これまでの結果を補足する実験、例えばmRGCの光反応における日内変動や性差における違いなどについて被験者数を増やして行いたいと考えている。これらの実験では拘束時間が長いことから、被験者の確保が難しい。対応策として、実験設定の工夫による拘束時間の短縮が考えられる。
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