2010 Fiscal Year Annual Research Report
シロイヌナズナを用いたアブラナ科自家不和合性機構の解明
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22780002
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
諏訪部 圭太 三重大学, 大学院・生物資源学研究科, 准教授 (50451612)
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Keywords | シロイヌナズナ / 自家不和合性 / 自他認識反応 / 突然変異 / ゲノム / 雄性配偶子 / 花粉 / 近縁野生種 |
Research Abstract |
シロイヌナズナが自家不和合性を失った原因を解明するために、シロイヌナズナと同じ遺伝子型を有する近縁自家不和合性種ハクサンハタザオ(Arabidopsis halleri)を選抜し、自家不和合性雄側認識因子SP11/SCRについて単離・比較を行った。その結果、シロイヌナズナSP11/SCRにおいて推定されている第2エキソン内の翻訳を妨げる逆位はハクサンハタザオには存在せず、終止コドンまで正常なアミノ酸情報を有していた。またアミノ酸コード領域外では、第1・第2エキソン間に存在する1157bpのイントロン内にシロイヌナズナゲノムには存在しない258bpのハクサンハタザオ特異的挿入配列が存在していた。RT-PCRによりSP11/SCRの遺伝子発現を比較すると、花発達ステージに沿った発現プロファイルは両種でほぼ同じであったが、シロイヌナズナのSP11/SCRの転写量はハクサンハタザオのそれに比べて約1/10まで低下していた。プロモーター領域の塩基配列を比較すると、翻訳開始点上流262bpまでは両種でほぼ共通していたが、それより上流領域では相同性は極めて低かった。以上の結果より、シロイヌナズナとハクサンハタザオのSP11/SCRには、1.第2エキソンの逆位の有無、2.イントロン内の258bpの挿入・欠失、3.転写量の差異(プロモーター配列の違い)があり、正常なSP11/SCRタンパク質を生成するための遺伝子情報と発現制御機構の両方に違いがあることが明らかになった。これらが自家不和合性機構の維持あるいは崩壊の原因と推測される。今後はこれら3点の違いを修復したSP11/SCRを人工的に作成しシロイヌナズナに遺伝子導入することで、自家不和合性崩壊との直接的な関連を明らかにする予定である。
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