2010 Fiscal Year Annual Research Report
テッポウユリにおける自家不和合・和合性の遺伝・生理メカニズム
Project/Area Number |
22780027
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
坂園 聡美 九州大学, 農学研究院, 学術研究員 (00551508)
|
Keywords | テッポウユリ / 自家不和合性 |
Research Abstract |
【テッポウユリ自家不和合性反応成立の要因】植物ホルモンの一種であり,老化を阻害する働きをもつサイトカイニン(ベンジルアデニン(BA))を自家授粉後のテッポウユリ雌ずいに処理し,自家不和合性反応を観察した.BA処理濃度は(0%,0.1%,1%,10%)とし,雌ずい内での自家花粉管停止位置が異なる3品種('ひのもと'(自家不和合性強),'Georgia'(自家不和合性中程度),'Snow Queen'(自家不和合性弱))を供試した.なお,これら3品種はいずれも通常の自家交配では種子が得られない自家不和合性を示す.実験の結果,'Georgia'および'Snow Queen'では自家結実率とBA処理濃度が比例し,一方'ひのもと'は0.1%および10%BA処理でのみわずかに自家結実した.また,BA処理した花柱内では自家花粉管がより長く伸長しており,子房内への侵入も観察された.雌ずいの老化はBA処理によって阻害された.以上のことから,テッポウユリにおいて自家結実に至らない原因のひとつとして,雌ずいの老化が考えられた. 【マイクロサテライトマーカーの開発】テッポウユリは自家不和合・和合性に関して個体間変異がみられるが,その遺伝解析はいまだ行われていない.そこで自家不和合・和合性に関する遺伝的制御の解明に有効なマイクロサテライトマーカーの開発を行った.プライマーを設計したマイクロサテライト領域のうち,明瞭なバンドが得られた4プライマーについて,石垣島自生集団のテッポウユリ22個体を用いてその有効性を調査した.結果,2マーカーは多型数が14と特に多型度が高く,ヘテロ接合度(期待値)はそれぞれ0.863と0.892であった.今年度開発したマイクロサテライトマーカーはテッポウユリの個体識別や自家不和合・和合性に関する遺伝的変異の調査に有効であり,来年度以降の実験に用いる予定である.
|