2011 Fiscal Year Annual Research Report
タイプIII分泌エフェクターXopRを介したイネ白葉枯病菌の植物感染機構の解明
Project/Area Number |
22780043
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
古谷 綾子 茨城大学, 遺伝子実験施設, 助教 (30570270)
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Keywords | タイプIII分泌機構 / エフェクター / イネ / 白葉枯病菌 / 自然免疫 |
Research Abstract |
1.xopR遺伝子を導入した形質転換イネを利用したイネ防御応答の解析 デキサメタゾン誘導プロモーター制御下でxopR遺伝子を発現する形質転換イネを用いた解析では、xopRが植物防御応答拘制に関与するという明確なデータを得ることが出来なかった。一方で、形質転換シロイヌナズナを用いた解析では、白葉枯病菌XopRの発現により、(1)植物体内での細菌増殖の促進、(2)植物の自然免疫反応の1つとされる細胞壁におけるカロース沈着の抑制、(3)自然免疫の引き金となるMRMPs誘導性遺伝子の発現誘導が確認され、本エフェクタータンパク質が植物防御応答抑制に関与することが示唆された。 2.XopRとOsBIPP2C1の相互作用についての解析 本年度もosBIPP2C1の局在を明らかにすることは出来なかった。また、BiFC法によりXopRとOsBIPP2C1の相互作用について検討を行ったが、ポジティブな結果を得ることは出来なかった。 3.OsBIPP2C1の機能解析 トウモロコシ由来のユビキチンプロモーターでOsBIPP2C1を過剰発現させた形質転換イネの作出を試みた。しかし、空ベクターを導入した対照区では形質転換候補が得られた一方、OsBIPP2C1遺伝子導入区ではそれが得られず、本遺伝子の過剰発現が致死に作用している可能性が考えられた。OsBIPP2C1は、プロテインボスファターゼ2Cフナミリーのタンパク質と相同性をもつが、実際にホスファターゼ活性をもつかについては明らかでなかった。大腸菌において発現・精製したHis-OsBIPP2C融合タンパク質は、塩基条件下でホスファターゼ活性を示し、リン酸化スレオニンを含むペプチドを基質とし、その活性にはMg^<2+>イオンが必要であることが確認され、OsBIPP2C1がPP2Cファミリータンパク質であることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
イネでOsBIPP2C1を過剰発現させると致死的に作用する可能性が示唆され、今後は誘導型プロモーター等の利用の検討が必要であることが明らかとなった。形質転換イネを用いた解析については、あまり進めることができなかった。また、タンパク質の局在およびタンパク質問相互作用については、解析を試みたものの結果を得ることができなかった。しかし、OsBIPP2C1の機能解析では、本タンパク質がPP2Cとしての酵素活性を有することが明らかにできたことから、今後、in vitro実験によりXopRがOsBIPP2C1のホスファターゼ活性に及ぼす影響についての検討可能であることが明らかとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
エフェクター遺伝子を導入した形質転換イネを用いた解析にいくらか重点を置き、解析を推進する。 OsBIPP2C1遺伝子の過剰発現イネが得られなかったのは、イネで本遺伝子を過剰発現させると致死的に作用する可能性も考えられる。したがって、次年度は薬剤誘導型プロモーターの利用を検討している。これにより得られた形質転換体については、次年度が最終年度であることを踏まえ、カルスを用いた解析を中心とし、植物体を用いた解析はRNAi法により発現抑制させた形質転換体について行う。
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