2010 Fiscal Year Annual Research Report
共生細菌二種共同による昆虫性比偏向とそれを阻害するオス因子の動態
Project/Area Number |
22780048
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
森村 幸代 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 九州沖縄農業研究センター・難防除害虫研究チーム, 任期付研究員 (80533140)
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Keywords | 共生細菌 / 性比偏向 / ヒメトビウンカ / スピロプラズマ / ウォルバキア / オス殺し / 不完全変態 / 個体群動態 |
Research Abstract |
ヒメトビウンカの野外個体群に著しくメスに偏った性比の個体群を発見した。本研究では、その原因がメスを通して垂直伝搬する共生細菌であるかを検証した。ヒメトビウンカの共生細菌としてはウォルバキアが知られているが、この細菌による性比偏向はない。そこで、ウォルバキア以外の共生細菌を探索したところ、スピロプラズマを確認し、メスに偏った仔を生産する個体にはウォルバキアとスピロプラズマが二重感染していることを明らかにした。しかし、野外にはスピロプラズマ単独感染の個体がいないため、メス性比偏向が二重感染によるものか、スピロプラズマ単独によるものか確証が得られていなかった。そこで、平成22年度の研究計画では、1.抗生物質処理により単独感染系統を作出し、その体液を非感染系統に摂取し、どの組み合わせで性比偏向が発現するか検証する。2.単離培養したウォルバキアとスピロプラズマを非偏向系統に導入し、様々な感染組み合わせで性比偏向の程度を調査する。以上の二点について実施し、単離培養については現在も進行中である。一方、抗生物質処理により作出したスピロプラズマ単独感染系統では、次世代への垂直伝搬率が低いことが示唆されたため、単独感染系統を3世代まで選抜したところ、このスピロプラズマ単独感染系統でも著しくメスに偏る性比偏向が起こった。さらに、感染個体の飼育実験から、この感染による性比偏向が幼虫期における"オス殺し"によるものであることも明らかにした。スピロプラズマによる"オス殺し"現象は完全変態昆虫の複数種で知られているが、不完全変態昆虫では初めての発見であり、イネウンカ類の個体群動態に大きな影響を及ぼす要因の一つとして注目される。
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Research Products
(1 results)