2011 Fiscal Year Annual Research Report
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22780051
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
菊池 義智 独立行政法人産業技術総合研究所, 生物プロセス研究部門, 研究員 (30571864)
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Keywords | 応用動物 / 昆虫 / 微生物 / 細菌 / カメムシ / 共生細菌 / Burkholderia |
Research Abstract |
多くの農業害虫はその体内に共生細菌を保持しており、緊密な相互作用を行っている。これら共生細菌は、食物の分解や栄養補償を行うなど、宿主の栄養代謝において極めて重要な役割を果たしている。これら共生細菌を制御することで食害の低減や害虫の成長・繁殖抑制を図りうると考えられるが、その研究はほとんどなされていない。本研究では、ホソヘリカメムシとその共生細菌であるBurkholderiaをモデル系として、昆虫-共生細菌間に見られる緊密な相互作用の遺伝的基盤を明らかにし、新たな害虫制御法の開発に資することを目的としている。研究2年目に当たる本年度は、(1)トランスポゾン挿入変異株の大規模スクリーニングと運動不全株(鞭毛形成不全株)の取得;(2)変異遺伝子のinverse PCR法による特定;(3)共生細菌の野生株および運動不全株における鞭毛の透過電子顕微鏡観察;(4)変異遺伝子の相補性試験;(5)Signature-tagged mutagenesis(STM)のBurkholderia共生細菌への適用、を行った。(1)に関してはこれまでの成果に加え約2000のトランスポゾン変異株をスクリーニングし、新たに6株の運動不全株を取得した。これまでに得られた計13株についてトランスポゾンで破壊された遺伝子の特定、電子顕微鏡による鞭毛の観察、カメムシへの感染テストを行い、鞭毛形成の有無よりも運動性の有無が共生器官への感染に重要であることを突き止めた。(4)および(5)については来年度以降の課題として、引き続き研究をする予定である。得られた成果の一部を論文としてまとめ発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は昆虫-細菌共生系の分子基盤を細菌側からの遺伝学的アプローチによって解明することにあるが、これまでの研究によって共生細菌の鞭毛形成が感染に重要であることが分かってきた。遺伝子変異株の大規模スクリーイングを行う段階から、特定の分子にターゲットを絞り詳細に解析する段階に入ることができた点で、研究は順調に進んでいるといえる。また、論文発表もコンスタントに行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は共生細菌の鞭毛形成・運動性に解析を絞り、電子顕微鏡による鞭毛観察や蛍光染色等による感染動態の観察を進め、これまでに得られている多様な鞭毛変異株がなぜ宿主共生器官に感染できないのか、そのメカニズムを組織学的に明らかにしていく。また、鞭毛遺伝子の相補株も作成し、遺伝子相補性試験を行う予定である。
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