Research Abstract |
申請者は近年,ヒトの腸管に生息する腸内細菌の中でいわゆる善玉菌として知られるビフィズス菌が,ヒト自身の分泌する糖質に作用する特異なグリコシダーゼ群を有していることを見出した.このことは,ヒトが腸管内に分泌する糖質そのものがビフィズス因子でことを示唆しており,ヒトと腸内細菌の共生を考える上での新たなパラダイムとなった.本申請課題は,ヒトの糖質のうち,特にムチン型糖鎖やミルクオリゴ糖に作用するグリコシダーゼ群を腸内細菌より単離し,ヒトとの共生を支えるメカニズムを考察すること,また,それらグリコシダーゼを高度利用して,生理活性オリゴ糖を精密合成することを目的とした.平成23年度は,1)ムチン型糖鎖のTn抗原に特異的に作用するα-N-アセチルガラクトサミニダーゼ(新規なグリコシダーゼファミリー),2)ヒト母乳オリゴ糖のコア構造であるラクト-N-テトラオース(1型糖鎖)に特異的に作用するβ-ガラクトシダーゼ,3)シアリルオリゴ糖に作用するシアリダーゼの遺伝子クローニングおよび機能解析を行った.また,ビフィズス菌のヒト母乳オリゴ糖代謝経路を解明するために,母乳オリゴ糖を単一炭素源として培養した際の上清に含まれるオリゴ糖の経時変化を解析した.さらに,1,3-1-4-α-L-フコシダーゼのX線結晶構造解析を行って,その基質特異性の構造基盤を解明すると共に,酵素機能を改変することで,1型糖鎖および2型糖鎖構造に立体・位置特異的にフコシル基を導入してルイスaおよびルイスx抗原を合成することに成功した.これらの結果は,以下の通り,報告および発表した.
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