2011 Fiscal Year Annual Research Report
出芽酵母の減数分裂に必須なヒストン脱アセチル化酵素の機能解析
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22780093
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
湯川 格史 広島大学, 大学院・先端物質科学研究科, 助教 (50403605)
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Keywords | 発生・分化 / 発現制御 / 減数分裂 / クロマチン |
Research Abstract |
出芽酵母のRPD3遺伝子はヒトHDAC1ホモログをコードし、その欠損株はほとんど胞子形成できないことが知られている。この表現型は、NDT80遺伝子をはじめとする減数分裂中期遺伝子群の転写誘導がほとんど起こらず、第一減数分裂への進行が著しく遅延するためであると考えられている。本年度は、Rpd3がどのように中期遺伝子群の転写誘導に関わっているかについて詳細な解析を行った。NDT80の転写誘導が起こるためには、Hst1-Sum1複合体によるMSE配列を介した転写抑制の解除と、Ndt80自身によるMSE配列を介したポジティブフィードバック制御が必要である。rpd3欠損株ではMSE配列を介した転写抑制から活性化への切り換えに異常が生じている可能性が考えられたため、sum1rpd3二重欠損株における中期遺伝子群の転写を詳細に調べた。その結果、この二重欠損株ではSum1による転写抑制が解除されたレベルまでNDT80の転写量は回復したが、Ndt80依存的な転写誘導がほとんど起こらず、NDT80以外のMSE配列を持つ中期遺伝子群の転写誘導も同様にほとんど観察されなかった。また、この二重欠損株では第一減数分裂へ進行している細胞の割合が少し増えたが、胞子形成には至らなかった。従って、rpd3欠損株ではMSE配列におけるSum1依存的な転写抑制の解除とNdt80による転写活性化の両方の制御に異常が生じていると考えられた。さらに、Sum1による転写抑制が解除されるためには、Sum1がMSE配列から解離する必要があるが、rpd3欠損株ではSum1の解離が非常に遅れていることがChIP解析によりわかった。以上の結果から、一般的に転写抑制に関わるケースが多いRpd3/HDACが、減数分裂中期遺伝子群の転写制御においては転写抑制因子をプロモーターから排除することによって転写誘導に導くという新たな分子制御モデルを提唱することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
HDACが転写を正に制御する場合の分子制御機構については不明な点が多い。その分子制御機構を理解する上で重要な手がかりが、本年度に実施したRpd3/HDACによる減数分裂中期遺伝子群の発現制御に関する詳細な解析を通じて得られた事は大きな進展であると考えられる。一方、出芽酵母の減数分裂・胞子形成過程において、Rpd3/HDACが中期遺伝子群の発現制御以外にも重要な役割を果たしているかどうかという点に関する検証ならびに解析がやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、出芽酵母のRpd3/HDACによるMSE配列を介した減数分裂中期遺伝子群の転写制御機構について、関連する転写因子とRpd3との遺伝的・物理的相互作用について検討すると同時に、MSE周辺のプロモーターの構造解析を行う予定である。また、Rpd3/HDACが中期遺伝子群の発現制御以外にも、減数分裂・胞子形成過程において複数の作用点で働くという可能性については、今後更なる検証が必要であると考えられる。このため、rpd3欠損株においてNDT80遺伝子を人工的に発現させた株を胞子形成条件に移した場合の減数分裂中後期遺伝子群の発現解析ならびに細胞形態観察をより詳細に行う必要があると考えられる。
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Research Products
(7 results)