2010 Fiscal Year Annual Research Report
食品因子による腸管上皮受容体型転写因子を介した消化器疾患予防・改善作用の解析
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22780115
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
薩 秀夫 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 助教 (80323484)
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Keywords | 腸管上皮細胞 / 転写因子 / 食品因子 / aryl hydrocarbon receptor / pregnane X receptor |
Research Abstract |
消化管の最前線に位置する腸管上皮細胞は食品成分などによって最も高頻度かつ高濃度に曝されることから、その機能が食品因子などにより制御・調節を受けることが考えられる。一方腸管上皮細胞に発現するAryl hydrocarbon receptor (AhR)、Pregnane X receptor (PXR)といった受容体型転写因子は従来の薬物代謝酵素の発現制御に加えて、大腸癌抑制作用(AhR)や抗炎症作用(PXR)など新たな生理機能が報告されている。そこで本研究では特にAhRとPXRに注目し、AhR/PXR転写活性評価系をそれぞれ構築しそれを用いてAhR/PXRを活性化する食品成分を探索、さらに実際に消化器疾患改善作用(AhR:大腸前癌、PXR:炎症性腸疾患)がみられるかを検討することとした。まずAhR及びPXRの発現ベクターとそれぞれの応答配列をルシフェラーゼ遺伝子上流に組み込んだレポーターベクターを構築し、これらをヒト肝由来HepG2細胞に安定に導入したAhR及びPXR応答性細胞株を構築した。現在構築した安定なAhR/PXR応答HepG2細胞株を用いて、AhR/PXR活性化を誘導する食品成分の探索をおこなっており、既にある種のフィトケミカルがAhR及びPXRを特異的に活性化することを見出している。並行して消化器疾患モデル動物の評価系構築も同時に進めることとし、化学発癌物質であるアゾキシメタン(AOM)投与による異型腺窩巣(ACF)形成大腸前癌モデルマウスの構築に成功した。なおACF形成はメチレンブルー染色など病理学的手法を用い、大腸癌発症に関わるβ-カテニンの発現解析などは生化学的手法を用いることとした。一方で、デキストラン硫酸ナトリウム(DSS)投与による大腸炎モデルも構築をすすめた。条件検討の結果、3%DSSを含む水を8日間程度自由飲水させることで、体重の減少、結腸の短縮、炎症性サイトカインの発現亢進など大腸炎の症状が誘導されることを確認した。今後見出されたAhRを活性化する食品成分をACF大腸前癌モデル、PXR活性化食品成分をDSS誘導大腸炎モデルにそれぞれ投与し、in vivoにおける消化器疾患抑制作用を検討する予定である。
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Research Products
(12 results)