2010 Fiscal Year Annual Research Report
アミノ酸摂取によるトリプトファン代謝制御を介したドーパミン機能調節
Project/Area Number |
22780123
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Research Institution | The University of Shiga Prefecture |
Principal Investigator |
福渡 努 滋賀県立大学, 人間文化学部, 准教授 (50295630)
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Keywords | 神経伝達物質 / アミノ酸 / 脳機能 / 神経疾患 / 食事 |
Research Abstract |
必須アミノ酸トリプトファンの代謝産物キヌレン酸は脳内でニコチン作動性α7アセチルコリン受容体アンタゴニストとして作用することにより,神経伝達物質ドーパミン放出を抑制する.食事を介して脳内のキヌレン酸濃度を調節するができれば,ドーパミン放出を調節でき,パーキンソン病や統合失調症などの神経疾患を予防できる可能性がある.報告者はこれまでに,高トリプトファン食の摂取によってキヌレン酸産生量が増大し,高リシン食の摂取によってその増大を抑制できることを明らかにしてきた.本研究では,分岐鎖アミノ酸がアストロサイトへのキヌレン酸前駆体キヌレニンの取込みを抑制し,キヌレン酸産生の増大を抑制できるか否かについて検討した.ラット大脳皮質から組織切片を作成し,各分岐鎖アミノ鎖を含む緩衝液中で培養すると,生理的濃度のロイシン,イソロイシンによってキヌレン酸産生の抑制および組織中のキヌレニン濃度の低下が認められた.ラットに1%トリプトファン・3%分岐鎖アミノ酸添加食を与えて7日間飼育したところ,ロイシンおよびイソロイシン添加食の摂取によって脳中キヌレン酸濃度および脳中キヌレニン濃度の低下,ドーパミン代謝回転の増大が認められた.バリン添加食には同様の効果は認められなかった.以上の結果より,分岐鎖アミノ酸であるロイシンおよびイソロイシンは,キヌレニンの取込みを抑制することによってキヌレン酸産生量を抑制したことが示唆された.高分岐鎖アミノ酸食によるキヌレン酸濃度上昇抑制とドーパミン放出増加を示す結果は,食事を介してキヌレン酸産生を調節することによってドーパミン放出を正常な範囲に調整できる可能性を示すものである.
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