2011 Fiscal Year Annual Research Report
食葉性昆虫被害のリスクが高い広葉樹林の適切な施業管理方法の創出
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22780137
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
松木 佐和子 岩手大学, 農学部, 講師 (40443981)
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Keywords | クスサン / ウダイカンバ / 昆虫の大発生 / 被食防衛能力 / 山火再生林 / 産卵選好 / 北海道 / 北東北 |
Research Abstract |
引き続き、2011年度も北海道中央部にてクスサンの被害程度を調べたところ、2010年度は東京大学北海道大学演習林の一部で見られていた食害被害が北海道演習林全体に広がり、ウダイカンバ純林(山火再生林)のみならず、トドマツと広葉樹の混交林でもウダイカンバの食い尽しが起きるほどに被害が広がっていた。幼虫段階でのウダイカンバへの選好性については既に報告したところだが、成虫についても産卵時に雌成虫のウダイカンバに対する選好性があるかについて、室内実験を行ったところ、シラカンバ、オニグルミ、クリよりもウダイカンバ幹への産卵数・卵塊数が多く、産卵の段階で、既にウダイカンバへの選好性がある可能性が示唆された。 2010度の飼育実験から、夏葉よりも春葉でクスサン幼虫の成長が良いことから、間伐を行っていない鬱閉した林を構成しているウダイカンバでは、間伐を行いウダイカンバ1本1本が大きな樹冠を持った林を構成しているウダイカンバよりも、葉全体数(春葉+夏葉)に対する春葉の数が多くなり、結果的にクスサン幼虫が好む葉の割合が高まることから被害が助長されると予想し、無間伐のウダイカンバ林と適切な間伐が行われた林でそれぞれウダイカンバを数本ずつ抜刀し、春葉と夏葉の数を数えた。その結果、予想に反して無間伐林のウダイカンバの方が春葉の割合が少ない事が分かった。これは、間伐区ではほぼ全ての長枝に果穂が付いており、豊作だったことから繁殖枝の夏葉数が抑えられた可能性が考えられる。一方、無間伐林のウダイカンバでは繁殖枝は一本も見られなかった。 北海道および北東北3県で実施したアンケート調査により、一部の都市部を除き、全域でクスサン成虫の飛散が見られる事が明らかになっており、今後北東北で選好性の高いウダイカンバ成木林が増加した場合、大発生が起きる危険性も考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
クスサン幼虫および成虫の樹種選好性に関する実験は順調に行われ、結果が出されている。また、北海道では、昨年度に引き続き大発生が広がっている事から、野外でのデータ収集も行う事ができた。クスサンの餌となる葉の成分分析については実施が遅れているため、2012年度に実施を予定している。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの調査や実験から、昆虫(クスサン)側の選好性についてはかなり明らかになっているが、その要因を植物側から説明することに関して研究を進める必要がある。2012年度には、ウダイカンバの成木、稚樹および春葉、夏葉で被食防衛物質および栄養物質がどのように異なるのか、何が原因で選好性が大きく異なるのかについて明らかにすることで、ウダイカンバ林の管理方法について提案したい。
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Research Products
(3 results)