2011 Fiscal Year Annual Research Report
微弱発光計測技術を応用した遅延発光にもとづく樹木の活力診断手法の開発
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22780143
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
今西 純一 京都大学, 地球環境学堂, 助教 (80378851)
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Keywords | 緑化工学 / 造園学 / 林学 / 遅延蛍光 / 光合成 / 渇水ストレス |
Research Abstract |
現在、樹木の活力度は外観により経験的に判定されることが多く、評価の客観性に問題が指摘される場合がある。遅延発光は、光合成の異なるプロセスからの逆反応の結果、光化学系IIより微弱な発光が生じる現象で、励起光下で観察されるクロロフィル蛍光よりも、直接的に光合成に関わる情報が得られる利点をもつ。そこで、本研究は、最新の微弱発光計測技術を応用して遅延発光を測定し、光合成のプロセスと関連づけた樹木の活力診断が可能であるかを検討し、実用的な活力診断手法を開発する。 本年度は、樹木の活力診断における遅延発光の有効性を明らかにするために、下記の試験を行った。 (1)葉の脱水による渇水ストレス負荷試験 植栽樹木の生育不良の原因としてもっとも多い、渇水ストレスを負荷する試験を、生育良好なヤマザクラの個体を対象に行った。葉の脱水にはプレッシャーチャンバーを用いた。2段階の水ポテンシャル(木部圧ポテンシャル)を設定して、遅延発光の減衰過程の変化を計測し、樹木の活力診断手法としての可能性を検討した。 (2)鉢植え苗を用いた渇水ストレス負荷試験 ヤブツバキを対象として、鉢植え苗の灌水を停止して、渇水ストレスを負荷する試験を行った。渇水ストレスの負荷にともなう遅延発光の減衰過程の変化を計測し、樹木の活力診断に利用可能であるかを検討した。 (3)野外植栽の多数の個体を対象とした実用試験 奈良県吉野山のヤマザクラを対象として、遅延発光の計測を行った。同時に、目視による活力4ランク評価や、葉のクロロフィル濃度の測定などを行い、それらとの比較から、遅延発光による活力診断の実用性や特徴を検討した。 本年度は、初期段階の検討として、渇水ストレス負荷にともなう遅延発光の減衰過程の変化を指標化し、その指標の有効性を検討した。本年度の研究の結果、特許出願と学会発表を行うことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書に記載した研究の目的を達成するための、データを順調に取得することができた。また、初期段階の検討として、遅延発光の減衰過程の変化を指標化し、成果を発表することができた。 交付申請書に記載した3つのレベルの試験((1)葉の脱水による渇水ストレス負荷試験、(2)鉢植え苗を用いた渇水ストレス負荷試験、(3)野外槙栽の多数の個体を対象とした実用試験)をすべて実施することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、〓葉の脱水による渇水ストレス負荷試験と(3)野外植栽の多数の個体を対象とした実用試験の間をつなぐために、ヤマザクラを対象とした(2)鉢植え苗を用いた渇水ストレス負荷試験を追加で実施する。遅延発光による樹木の活力診断手法の汎用性を検討するために、異なるタイプの樹木を対象に試験を行う。
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