2011 Fiscal Year Annual Research Report
魚類の獲得免疫系における細胞性免疫と液性免疫のウイルス感染防御効果
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22780176
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
杣本 智軌 九州大学, 農学研究院, 准教授 (40403993)
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Keywords | 水産学 / 魚類 / 免疫学 / ギンブナ / ウイルス / 獲得免疫 |
Research Abstract |
本年度は、ウイルス感染時におけるギンブナのヘルパーT細胞の役割をin vivoで調査するため、次の手順で養子移入免疫研究を遂行した。先ず、Crucian carp hematopoietic virus (CHNV)感染ドナー由来のCD4陽性T細胞(ヘルパーT細胞)を含む白血球群、CHNV感染ドナー由来のCD4陽性T細胞を除去した白血球群、非感染ドナーの白血球群のそれぞれ3種をドナー細胞とし、同系統のレシピエントのギンブナに移入した。次に、レシピエントのギンブナにCHNVを10^6TCID_<50>/50g魚体重接種し感染させた。その後、液性免疫の指標として、レシピエントの血清中のCHNV特異抗体産生量をELISAで、細胞性免疫としてCHNV-感染細胞に対する傷害活性を遊離LDH活性法にて測定した。 その結果、ヘルパーT細胞を含むドナー細胞を移入したレシピエントは、他のドナー細胞を移入したレシピエントと比較して、より早い時期(感染5日後)に特異抗体を産生し始め、有意に高い抗体産生量を示した。一方で、レシピエントの細胞性免疫応答は、ヘルパーT細胞の有無に関わらず、感作ドナー細胞を移入することで、亢進することが分かった。以上の結果から、魚類のヘルパーT細胞はウイルス感染時に特異抗体産生を補助する役割があることが明らかとなった。また、ウイルス感染細胞に対する細胞性免疫応答は、ヘルパーT細胞に依存しない経路によっても、活性化されることが示唆された。これにより、魚類の細胞性免疫の誘導には、哺乳類とは異なる機構が備わっていることが推測され、来年度は当初の計画を少し変更し、細胞性免疫の誘導機構に着目した研究を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
詳細な試験区の変更など、多少の実験計画の修正もあったが、「魚類の細胞性と液性の両免疫系におけるウィルス感染防御効果を生体レベルで解明する」という研究目的については、順調に達成されつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度の結果を踏まえ、細胞性免疫により着目した研究に変更する予定であるが、大まかな研究内容については当初の計画に従う予定である。具体的な変更点は、ウイルス感染に対する細胞性免疫担当細胞をより詳細に特定した後、in vivoでのその細胞のウイルス感染防御効果を調べる予定である。
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