2011 Fiscal Year Annual Research Report
非モデル魚における集団特異的適応遺伝子の検出:網羅的遺伝子発現解析と自然選択解析
Project/Area Number |
22780180
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Research Institution | Fukui Prefectural University |
Principal Investigator |
小北 智之 福井県立大学, 海洋生物資源学部, 講師 (60372835)
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Keywords | 適応進化 / 魚類 / 自然淘汰 / 海洋生態系 / 変動環境 / 遺伝子発現 |
Research Abstract |
日本海側が太平洋側とは、現在と過去の気候やその変動パターンが大きく異なることは広く知られた現象である。日本海は過去の気候変動の影響を顕著に受けた代表的な水域であり、特に、最終氷期の最盛期には、低水温化・低塩分化などの大きな環境変動を経験したとされている。それでは、このような氷期の寒冷化を含む変動環境の中で水圏生物の日本海集団固有の適応進化は生じたのだろうか?研究代表者は、海洋の自然集団の適応的分化にアプローチする絶好のモデル系として、日本海-太平洋間の遺伝的変異に注目し、シロウオに見られる日本海型と太平洋型をモデルとして研究を進めてきた。本研究では、シロウオのような非モデル生物において、効果的な手法であると考えた網羅的遺伝子発現解析のアプローチ(HiCEP法)の適用可能性を詳細に検討し、その手法を用いて日本海型の適応進化と関連した候補遺伝子群の網羅的探索を目的とした。日本海型と太平洋型の筋肉組織からmRNAを抽出し、得られたprePCR産物から、数多くのバンドが得られたプライマーセットを用い、選択的PCRを実施した。得られたフラグメントをアラインメント後、発現量の指標となるフラグメントのピーク高を両型間で比較した。各型8個体の解析の結果、約8%のフラグメントに有意なピーク高の差異が認められ、日本海型で高発現の遺伝子群と太平洋型で高発現の遺伝子群の頻度には有意な差は認められなかった。これらの一部のフラグメントに関しては、高分解能を有するゲルを用いて分離し、塩基配列情報を得たが、相同性のある既知遺伝子を見出すことはできなかった。しかし、これらの配列情報を用いてqRT-PCR解析を行ったところ、その発現量変異はHiCEPの結果と一致し、本手法の精度の高さが明らかとなった。今後、HiCEPのprePCR産物の塩基配列情報を次世代シーケンサーを用いて網羅的に得ることによって、日本海環塊への適応遺伝子の候補を網羅的に探索できるものと期待される。
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