2010 Fiscal Year Annual Research Report
個別畜産経営体による家畜衛生管理選択行動と経済性の評価
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22780197
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Research Institution | Obihiro University of Agriculture and Veterinary Medicine |
Principal Investigator |
窪田 さと子 国立大学法人 帯広畜産大学, 畜産学部, 助教 (90571117)
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Keywords | 家畜衛生 / リスク認知 / 二重プロセス理論 / 飼養衛生管理基準 |
Research Abstract |
本研究は,施行から5年が経過した「飼養衛生管理基準」を取り上げ,畜産農家の家畜衛生行動を決定づける要因と,個別経営体に与える影響を明らかにすることを目的としている.飼養衛生管理基準は,畜産農家が遵守すべき最低限の衛生管理として位置付けられているが,その実施程度は様々である.これは,リスクを認知する過程に違いが生じていることが一因として考えられる.そこで,リスクを認知するための情報処理の過程で直観型と分析型が存在する,という二重プロセス理論を,飼養衛生管理行動の要因の一つとして評価分析に加えた.二重プロセス理論では,分析型にある場合多くの認知資源と時間を要するが,直観型にある場合よりも論理的な判断を持つことができるとされている.北海道の北部に位置する酪農地帯2地域を選択し,当該分析を行うためのアンケート調査を行った.一方の地域では農協の支援が厚く,消毒などの農協が主体となって行っている対策は実施程度が高い.他方では,農協が広域合併をしており個々の畜産農家に対する支援はないが,畜産農家の自主性が見られた.二重プロセス理論をあてはめてみると,前者は直観型のプロセスを採用している農家が多く,後者は分析型のプロセスを採用している農家が多くみられた.また,分析結果から,分析型傾向にある畜産農家の方が感染症に対するリスク認知が高く,飼養衛生管理もより的確に実行されており,乳質にもつながっていることが明らかとなった.以上は,畜産農家を対象としたワークショップという形で情報の共有を行っている.地域性,農家の特徴などを踏まえた上でさらに分析を重ねることで,個々の経営体に有効な家畜衛生支援方策を検討できるものと考える.また,このような情報処理プロセスは,大きな事故の発生や社会的背景によって変化することも推察され,今後は時間的変化にも注目する必要があると思われる.
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Research Products
(1 results)