2011 Fiscal Year Annual Research Report
チェンジ・エージェント間の技能伝承メカニズムに基づくストーリーテリング手法の開発
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22780198
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
安江 紘幸 東北大学, 大学院・農学研究科, 助教 (40508248)
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Keywords | チェンジ・エージェント / ナラティヴ(物語り) / バイオビジネス / 農業経営学 / 農業普及 / 篤農技術 |
Research Abstract |
チェンジ・エージェントの関与によって篤農技術がどのように伝承されているかを明らかにするため,文献調査ならびに質問紙調査及びインタビュー調査を実施し,その一連の流れを調査した。具体的には,野家啓一の物語り論に依りながら,組織構成員の規範となる物語り文の抽出を経営主世代と後継者世代に分けて抽出するための分析枠組みを援用し,実証的な分析を行った。この分析枠組みは,前年度に実施の篤農家の経験談を基にしたテキストをデータ化し,文章中の形容詞・名詞の頻度を解析することで有効性の検証を行った。ここでは,チェンジ・エージェントの関与による技術習得および規範化の程度が異なるか否かを回答者の属性で判断した。特に,その関与を受ける前と後における意識変化や会話の内容の変化に着目した解析を実施した。 その結果,チェンジ・エージェントの関与が深まることにより,組織構成員が世代ごとに規範化されて行動および思想が類似する可能性が確認できた。なお,現在のところ,対象とした各世代が揃っているという点においては,物語り文が受け継がれているといえる。つまり,歴史経緯を時間系列順にさかのぼり把握することで世代別でも組織が繋がっているということである。 今年度は設定した分析枠組みを適用することで,チェンジ・エージェントの関与による篤農技術の継承が円滑にかつ形式的な知識のみならず暗黙的な知識(知恵)を伝達することの有用性を指摘できた。また,伝達情報の不確実性や普及に際しての受け手の不安定性,そして,個別学習成果の散逸を回避するためには,集団あるいは組織を利用して個人の興味・関心に自ずと気づかせることを前提として「語る」ことで,篤農技術の継承が成立する可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年度に発生した東日本大震災の影響により,岩手県職員である研究協力者の1人との連携が困難になるとともに,第3次事業仕分けの対象となった農業者大学校の閉校により,もう1人の研究協力者との共同調査が不可能となったため,研究推進力が大幅に減退した。
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Strategy for Future Research Activity |
当初予定していた研究協力者との体制が崩れていることが問題であるが,研究計画の変更を行わずに当初の研究を遂行する上で,最後の研究協力者とこうした避けられない(想定し得ない)問題に対応するための準備等を昨年度中に実施した。具体的には,石川県奥能登珠洲市で地域農業の担い手となる法人設立の胎動があり,その核となる篤農家と研究協力者との関係性を取り上げることで,本研究課題を強力に推進するものである。また,既述の篤農家(本研究ではチェンジ・エージェントとして想定)が有する技能をどのように他者へ伝承するかについては,当事者から全面的な研究協力が得られるとともに,研究協力者から税務・財務に関する実務的な助言を仰げるように研究体制を再構築した。
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