2011 Fiscal Year Annual Research Report
農業気候変動緩和策の普及可能性と持続性に関する研究-途上国を中心として-
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22780201
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
丸山 敦史 千葉大学, 大学院・園芸学研究科, 准教授 (90292672)
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Keywords | 気候変動緩和策 / CDM / 農家行動 / 持続性 / 途上国 |
Research Abstract |
本年度は、まず、前年度に収集整理したASEAN地域におけるCDMプロジェクトのプロファイルデータを用いて、炭素クレジット(CER)発行数の規定要因を計量モデルにより再検討した。分析結果は、CER発行数が、プロジェクトの規模やプロジェクトスキーム(自家利用熱エネルギーなど)により異なるという仮説を統計的に支持するものであった。他方で、ホスト国やドナー国については、期待と異なりCERとの間に明確な傾向はみられなかった。次に、農業部門においてメタンを中心とした温室効果ガス(GHG)の排出削減ポテンシャルが大きいとされる稲作に注目し、近年の研究成果を収集した。中干し、間断灌漑、直播き、効率的な肥料投入、不耕起栽培といった代表的な稲作農法の気候変動緩和型農業としての役割を検討するため、各農法の実施費用と期待されるGHG削減効果を比較した。予備的分析のため今後の精度向上が必要であるが、炭素市場の利用が十分にできない状況下では、間断灌漑(AWD)以外の選択肢を普及させることは農家にとっての経済的メリットが小さく現実的ではないことが明らかになった。最後に、AWDを中心とした緩和型農法の普及可能性を農家レベルで検討するため、フィリピンパンガシナン州の稲作農家に対して小規模の調査を実施した。パンガシナンは、同国の主要な稲作地域である。得られたデータを整理した結果、AWDの採用農家は20農家中8件でありフィリピン国内の平均的な地域より高い数値であったが、灌漑施設や地形的要因に強く規定されるため、さらなる拡大は難しい状況が明らかになった。他方で、残渣の処理に関する緩和オプションの場合は、その採択率と栽培面積や単収といった生産属性との間に関連性が見られた。この事実は、緩和型農法に応じた普及施策の必要性を示すものである。しかし、農業技術の採用には意思決定者の個人属性との関連性が一般に指摘されていることから、今後更なる検討が必要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
データ収集は予定通りのペースで進んでいるが、分析枠組みの見直しを迫られるケースが多く、モデル構築の面で一部遅れが出ている。
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Strategy for Future Research Activity |
収集した資料の再検討を行い、追加調査の実施が必要な場合は次年度中に行う。農家行動に関する文献調査とモデル構築を可能な限りすすめ、最終年度への研究につなげる。
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