2010 Fiscal Year Annual Research Report
20世紀前半の帝国日本における水稲品種技術の社会的影響の研究
Project/Area Number |
22780202
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
藤原 辰史 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 講師 (00362400)
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Keywords | 品種 / 永井威三郎 / 朝鮮総督府 / 科学技術 / 農民 / 生活 / 育種 / 植民地 |
Research Abstract |
2010年度で本研究成果において最も重要な成果は、Japanese Rice Varieties in Colonial Korea:from the View of Nagai Isaburoである。ここでは、朝鮮総督府農事試験場で育種家として研究と指導を行い、のちに文筆家としての活躍した永井威三郎について論じた。本研究の調査出張などで収集した論文や新聞雑誌をもとに、朝鮮半島の農民たちが新技術の普及によってどのように生活が変わったのか、あるいは変わらなかったのかについて永井がどのような調査を行ってきたのかを考察した。ここでは、新しい技術の導入が必ずしも朝鮮半島の農民の生活を改善しているわけではないことを告白し、そのためには旧来の伝統的な技術も用いるべきであるとさえ論じていた。ここには、日本の帝国支配における科学技術導入の限界が垣間見え、本研究の重要な画期となった。また、副産物として、単著『カブラの冬-第一次世界大戦期ドイツの飢饉と民衆』では、永井威三郎が第一次世界大戦期ドイツ敗北の原因について論じている本『日本の米』を発見した成果を発表した。ここでは、品種改良の重要性として、あるいは「大東亜戦争」下の食糧政策の重要さを、ドイツの敗北の体験から少年少女に訴えている。 また、海外での英文での発表ではアジアやヨーロッパの研究者から多くのコメントを頂戴し、参考になった。 なお、計画に記した品種のデータベースの作成は予想以上に難航し、来年度は計画を立て直して、鋭意作成に務めていきたい。また、海外での史料調査もほとんどできなかったので、これも2011年度にドイツを中心に収集を行いたい。
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