2010 Fiscal Year Annual Research Report
ミクロデータによる戦前期農家の経済行動に関する研究
Project/Area Number |
22780206
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Research Institution | Shiga University |
Principal Investigator |
藤栄 剛 滋賀大学, 環境総合研究センター, 准教授 (40356316)
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Keywords | ミクロデータ / 戦前期 / 計量分析 |
Research Abstract |
本研究の課題は,戦前期におけるわが国農家のミクロデータを用いて,農家の経済行動をミクロ計量経済学的手法によって明らかにすることである. 本年度は,戦前期のわが国農家に甚大な影響をもたらした昭和恐慌による外生的なショックに対する農家家計の対処行動を検討した.検討に際しては,帝国農会「農業経営調査」における「最近十ヶ年に於ける農業経営の変遷」の農家家計パネルデータを用い,特に要素投入や土地利用の変化に着目した. 検討の結果,農家家計は農地放出の加速化,養蚕農家による兼業労働の増加と雇用労働の節減,稲作農家による労働多投化,耕種農家による肥料投入量の節減によって,恐慌ショックに対処していたことがわかった.特に,恐慌による借入制約の強化や農業所得の減少は,農地放出の加速化や経営規模階層の変動を促した.また,農地放出によって,資本規模の大きい地主層の耕作地主化や小自作農の過小農化が進展した一方で,自作農・自小作農は家族労働の農業従事を高水準に維持しつつ,雇用労働も活用することで耕地拡大を図り,中規模層へと上向した可能性が示唆された.こうした結果は間接的ながら,先行研究における中農標準化の議論を定量的な観点から支持している.また,恐慌ショックへの対処を通じて,耕種農家の土地生産性の向上が阻害されたことも示唆された.以上の結果は先行研究の知見をミクロデータから裏付けるものとして位置づけられる。なお,得られた結果は学術雑誌において公表される予定である.
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