2011 Fiscal Year Annual Research Report
生物多様性保全に配慮した農業技術の普及に関する研究
Project/Area Number |
22780207
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Research Institution | Shiga University |
Principal Investigator |
西村 武司 滋賀大学, 環境総合研究センター, 特任講師 (80574029)
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Keywords | 生物多様性 / 特定外来生物 / 花粉媒介昆虫 / マルハナバチ / 技術採用 / 技術普及 |
Research Abstract |
本年度は、トマト・ミニトマト生産者によるマルハナバチの使用を事例として、生物多様性保全に配慮した農業技術の採用行動および普及過程を明らかにするためのデータを収集し、分析を試みた。 昨年度から引き続き実施してきた愛知県のトマト・ミニトマト産地における農協および生産者に対するヒアリング調査を踏まえ、愛知県内の2つの農協の協力の下、アンケート調査を実施した。アンケート調査では、セイヨウオオマルハナバチおよび在来種マルハナバチの使用開始時期や、マルハナバチがもたらす生態リスクに関する知識、ネット展帳の有無等について質問した。 アンケート調査票の集計結果から、基礎的情報として以下のことが明らかになった。(1)セイヨウオオマルハナバチを使用していたほとんどの生産者は、特定外来生物指定後、同種の使用継続か、在来種マルハナバチへの切り替えを選択しており、旧来の農業技術はほとんど選択されない。(2)施設へのネット展帳の理由としては、マルハナバチの逃亡防止よりも、施設外からの病害虫進入防止が多かった。ただし、(3)以上の生産者の行動には地域的な相違がみられた。これらの基礎的情報だけでも、生産者の技術採用の行動を示すデータとして有益である。 続いて、アンケート調査結果を利用し、在来種マルハナバチの採用要因に関する分析を行った。分析の結果、トマト生産者の性別だけでなく、セイヨウオオマルハナバチがもたらす生態リスクに関する知識等が、在来種マルハナバチの採用に影響を及ぼすことが明らかになった。さらに、セイヨウオオマルハナバチを採用した年と施設にネットを展帳した年との差が生産者ごとに多様であるという調査結果を踏まえ、この多様性を説明する要因として、各生産者の生態リスクに対する認識の違い等が影響していることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
トマト・ミニトマト産地におけるヒアリング調査およびアンケート調査を予定通り実施した。アンケート調査を集計・分析した結果、マルハナバチ使用に関するトマト生産者の行動を把握するのに必要な内容が含まれている。このことから、調査対象地域の選定は適切であり、また各地域での調査は予定通り順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度までに実施したヒアリング調査およびアンケート調査によって得られたデータを用いて、より適切な分析モデルの検討を行い、有益な政策的含意を導出する。また、分析から得られた結果を基にして、生物多様性保全に配慮した農業技術の普及の観点から、本研究で扱った事例の特殊性を抽出し、他の事例への適用可能性について検討する。
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Research Products
(2 results)