Research Abstract |
本研究は,不飽和土への水の浸潤過程において,浸潤前線の位置などを地中レーダによって非破壊で求め,その位置の時間変化から,その土の不飽和水分移動特性を求める手法の開発を目的としている.H23年度は,H22年度に実験土槽を用いた水分移動データに加えて,本学栄町研究圃場にて地中レーダの直達波の一つである地表波を用いて求めた地表面水分量分布の時間変化データを用いた解析を行った.実験土槽の水分移動データは,給水パイプから上下鉛直方向の浸潤前線の移動を反射波から求めたもので,浸潤前線の位置を電磁波電波速度から求めることができた. 地表面水分量分布の時間変化データは,82日間に計22回測定して得られたものである.測定は10m×4mの裸地に幅0.4mの測線を10本設置し,測線上をアンテナステップ距離(サンプリング間隔)を40cmとして行った.各測定地点で,地表波の伝播時間から地表波速度を求め,光速との比より地表面比誘電率が得られた.比誘電率からは,実験サイトのローム質土に適した比誘電率と体積含水率の関係を示した経験式より,体積含水率を求めた.その結果,各測定時に,体積含水率の二次元面的な分布を求めることができ,結果として22回分の面的な分布を得ることができた.そこで,各測定地点で鉛直一次元の水分移動を仮定し,汎用土中水分・溶質・熱移動シミュレーションプログラムHYDRUSを用いて逆解析を行った.その際に,降雨を上部境界条件,下部境界条件は自然排水境界条件として,GPRより求められた地表面体積含水率をもっともよく再現する不飽和水分移動特性(透水係数など)を求めた.すべての測定地点で逆解析を行うことで,不飽和水分移動の空間分布が得られた.このような不飽和水分移動の空間分布(トモグラフィ)を得ることは,土壌試料のサンプリングを基本とする方法では難しく,本研究のように比較的短時間で面的,立体的なデータ取得を行うことで可能となる.
|